それ、本当にブラック企業? 日本社会に誤って広がる「ホワイト企業信仰」が迎える末路:働き方の「今」を知る(3/4 ページ)
「ブラック企業」というワードの一般化に伴い、あれもこれもブラックだと指弾されることも。筆者は、そんな風潮に警鐘を鳴らす。そもそも「いい会社」って何だろう。
同社は業績絶好調で、2020年6月期は31期連続増収増益を達成した。事業環境が厳しい小売業で、かつコロナ禍にありながら、この業績は偉業といえるだろう。同社はグループ全体の売上高・総資産・時価総額が全て1兆円を超え、国内小売企業ではイオングループ、セブン&アイ・ホールディングス、ファーストリテイリングに次いで4社目となる「トリプルトリリオン」をも達成しているのだ。
同社のROE(自己資本利益率)は13%を超えており、この水準はイオンやセブン&アイを上回っているどころか、TOPIX(東証株価指数)採用企業の平均水準をも上回っている。「8%を超えれば優良」とされるROEにおいて、同社は日本トップクラスの優良企業とさえいえるのである。
しかし、同社は以前、長時間労働などが原因で「ブラック企業大賞」にノミネートされたことがあり、また業界ならではのハードワークというイメージが根強いのか、ネット上ではブラック企業とのうわさを目にすることもある。つまり、株主にとっていい企業と定義できても、従業員にとっていい企業ではない、とされているわけだ。このように、何を重視するか、そしてどんな切り口で捉えるかによって「いい会社」「悪い会社」の評価は真っ二つに分かれるのだ。
ホワイト企業は「万人にオススメの優良企業」なのか
では、従業員にとっての「いい会社」とは、どんな企業だろうか。例えば「無理なノルマや厳しいプレッシャーがない」というのが思い付く。その他、「休みが取りやすく、残業が少ない」「社風や人間関係がいい」などもあるし、人によっては「ブランドや知名度がある」「給料が高い」というポイントも重要だろう。
このように、労働・職場環境が整っており、福利厚生や研修など、従業員へのサポート体制も手厚い企業のことを総称して、俗に「ホワイト企業」と呼ばれる。こちらもブラック企業同様、明確な基準は存在しないが、「離職率が低い」「残業時間が少ない」「安定したシェアを持ち、無理な拡販をする必要がない」といった要素が共通点のようだ。
経済系メディアでは定期的に「平均年収が高い会社ランキング」「離職率が低いホワイト企業トップ300」などといったランキングが発表され、世間からホワイト企業と認識される企業が上位に並んでいる。しかし、この判断基準にも落とし穴はある。名誉のため具体的な企業名は明らかにできないが、これらランキング上位に名を連ねる企業の中にも、筆者がこれまで「もう辞めたい」と相談に乗った人が在籍していた企業や、内部告発が寄せられた企業は相当数存在しているのだ。
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