ビフォーアフターで見る、「目標管理」1on1の失敗例「課題を丸投げしてしまう上司」編:人事側のポイントも解説(2/5 ページ)
多くの企業が取り組む「目標管理」制度だが、なかなかうまくいかないケースも多い。その理由は、マネジャーと部下の間の温度感の違いにも起因する。では、どうすればいいのか。実際にあった1on1を基に振り返る。
目標管理の1on1失敗例(1):「課題を丸投げしてしまう」
この企業の目標管理のサイクルは半年ごとです。経営者から相談を受けたときは、ちょうど3カ月目の「中間チェック面談」のタイミングだったので、この1on1面談に同席しました。既に目標設定シートにより個人の目標は決まっている状況です。
とある面談で、次のようなやりとりがありました。部署は営業部。10人のメンバーがいます。マネジャーは40代半ば。部下は、2年目の若手社員。メンバーの中で最も若手の社員です。
上司A:今日は目標の中間チェック面談です。まず目標の進ちょく状況を説明してくれますか?
部下B:はい。全体の数字はまだ30%しか達成できていません……。すみません。
上司A:もう3カ月がたっているんだから、後半巻き返さないとね。何か打ち手は考えているのかな?
部下B:はい……。考えてはいるのですが、なかなか打ち手が見つからずに困っています。
上司A:困っているだけでは僕も困るねえ。そういえば山田工業さんはどうなの? あそこの社長さんはペーパーレス化を推進したいってこの間いってたよね。アプローチはしたのかな?
部下B:いえ……。まだできていません。
上司A:せっかくニーズがあるのにもったいないよね。すぐに提案すれば数字になるじゃないか。1週間以内に提案しに行こう。早速提案書を作ってください。僕も一緒に行くから、すぐに連絡してアポイントをとっておいて。
部下B:はい、分かりました……。
上司A:他のクライアントもすぐに取り組めばやれるところはあるのではないかな。以前、見込み先リストを作ったよね。それを全部見直して成約ができそうなところをピックアップして、すぐにアプローチしてみてくれるかな。
部下B:分かりました。
上司A:頑張れば今からでも取り返せると思うよ。では、よろしくね。
さて、どうでしょうか。皆さんの会社でも、このようなやりとりがあるのではないでしょうか。
ここで疑問が生じます。果たして、この部下は、期末には目標を達成できるのでしょうか。恐らく、難しいのではないでしょうか。なぜなら、この面談では「課題が一切解決していない」からです。
この面談の後、筆者は部下Bと話をしてみました。そうしたら、こんな話が部下から出てきたのです。
「うーん、決してサボっているわけでもなくて、アプローチの仕方が分からないというか……。山田工業の社長さんのニーズは理解しているのですが、それをどう実現すればいいのか分からないんです。これまで多くのクライアントに帯同させてもらって、話をする内容とかは分かっているつもりなのですが、いざ提案をするとなると、提案するポイントが分からなくて……。提案書を作ってもニーズに応えられるものが作れる自信がなくて手が止まってしまうんです。こうしてマネジャーからは丸投げされてしまうし……」
何と、先ほどの面談で、部下は「上司に丸投げされている」と感じてしまったようです。
次に筆者は上司であるマネジャーに「この部下にどう関与していくべきだと思いますか?」と質問してみました。
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