ビフォーアフターで見る、「目標管理」1on1の失敗例「課題を丸投げしてしまう上司」編:人事側のポイントも解説(3/5 ページ)
多くの企業が取り組む「目標管理」制度だが、なかなかうまくいかないケースも多い。その理由は、マネジャーと部下の間の温度感の違いにも起因する。では、どうすればいいのか。実際にあった1on1を基に振り返る。
課題は「部下が独りで解決するもの」という誤解
「うーん、彼が1年目のときには上司の僕や先輩メンバーに帯同して訪問していたので、営業のやり方は見せているつもりですが。彼ももう2年目なので、そろそろ独り立ちしてもらわなければ困るんですよね。彼には今年から担当をつけたのですが、こちらが思うように動いてくれなくて……。そもそも外出頻度が少ないと思うんです。席に座って考え込んでいることが多くて。1年目のときほど元気がないとも感じています。目標を自分で立てて、自分で進めていくのが目標管理制度ですよね? 自分で主体性をもって課題を解決していかないとこれから困ると思うんですよね」
このマネジャーは「早くこの部下に独り立ちしてほしい」と考えているようです。すでに1年目のときに多くの営業先に帯同させてやり方は見せている。だから、やり方は分かっているだろう――そう考えています。そして主体性を身に着けさせるために、自ら考えさせているといっています。
しかし、どうでしょう。部下はこの面談で「マネジャーに丸投げされている」と感じています。ここに、上司と部下のギャップが存在しています。
「主体性=独りで解決すること」ではない
確かに目標管理制度は「社員が主体性を持って自身を管理する」マネジメント手法です。しかし、この「主体性を持つ」ということを「独りで解決する」と誤解をしている上司はとても多いのです。この「主体性を持たせる」という言葉が、大きな誤解を生んでいると筆者は考えています。
部下に主体性を持たせるためには、上司や他のメンバーからの支援が必要です。特に上司は、時として一緒に考え、課題を解決していく必要があります。主体性は、独りで身に着けるのではなく、周囲の支援があってこそ身に着くものです。
ここまでを理解すると、このマネジャーの「部下に主体性を持たせる」という目的は正しいものです。一方で、部下が現在身を置いている「ステージ」はどうでしょうか。マネジャーの期待感とは裏腹に、そもそもクライアントへのアプローチの方法が理解できていないようです。従って、面談は次のように改善するべきです。
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