ビフォーアフターで見る、「目標管理」1on1の失敗例「課題を丸投げしてしまう上司」編:人事側のポイントも解説(4/5 ページ)
多くの企業が取り組む「目標管理」制度だが、なかなかうまくいかないケースも多い。その理由は、マネジャーと部下の間の温度感の違いにも起因する。では、どうすればいいのか。実際にあった1on1を基に振り返る。
部下のステージを意識してアドバイスしてみる
上司A:今日は目標の中間チェック面談です。まず目標の進ちょく状況を説明してくれますか?
部下B:はい。全体の数字はまだ30%しか達成できていません、すみません……。
上司A:そうですか。なかなか厳しい数字だね。うまくいかなかった課題は何だと思う?
部下B:そうですね。クライアントにアプローチする頻度が少なかったと思います。
上司A:なるほど。なぜアプローチする頻度が少なかったのかな? 他の仕事が忙しかったとか、アプローチできなかった理由は何か考えられる?
部下B:そうですね。先輩にもたくさん同席させてもらって、クライアントの営業のセールストークはできるようになって、何を求めているかは理解できるのですが、いざ提案しようとすると手が止まってしまって。山田工業も提案したいのですが、うまくまとまらない状況です。
上司A:なるほど。ニーズは分かるけれど、それをどう提案するべきかが分からない、ということかな?
部下B:はい、そうなんです。
上司A:じゃあ、今度うちのチームでクライアントへの「提案のポイント」の勉強会をやってみようか。先輩の提案事例を話してもらってディスカッションしてみよう。他のメンバーにも参考になるかもしれないしね。
部下B:助かります。ありがとうございます。
上司A:それと、先輩のC君に山田工業さんの件、状況を話してアドバイスをしてもらう時間を作ろう。僕からC君には伝えておくから。
部下B:ありがとうございます。頑張ります!
目標管理制度へのマネジャーの支援は、部下の「ステージ」により必要な場合があります。知識もノウハウもつき、あとは経験が必要な部下には、自ら考えさせることも大事ですが、まだ知識も経験も浅い部下は、まず「教え」をしっかり与えることこそが重要なのです。そのため、知識やノウハウが身に着くまでは、マネジャーが一緒に課題を解決することが必要です。部下の「ステージ」を意識したマネジメントが、上司には求められるのです。
目標管理制度を生かすために人事がやるべきこと
さて、ここまでを踏まえ、目標管理制度を生かすために、人事がやるべきことは何でしょうか。目標管理制度はあくまで「現場でのマネジメント」のための仕組みですが、だからといって全て現場任せにしてしまっていては、せっかく構築した目標管理制度も生かせません。
ポイント(1)目標管理制度の目的、手法の定期的なインプット機会を作る
今回のケースのように、マネジャーが「部下の主体性を持たせるために部下自身に考えさせなければならない」と考え、うまくいかないケースもあります。真面目に部下に対して取り組んでいるのだけれど、そのやり方が分からない、というマネジャーは多いのではないでしょうか。現場の仕事が忙しくて学ぶ時間をとれないかもしれません。
人事は、そんなマネジャーや社員に対して、目標管理制度を理解させる機会を作らねばなりません。今回のケースの企業では、15年も前から目標管理制度を導入しているにもかかわらず、人事主催の定期的なインプット機会はありませんでした。これでは、目的が形骸化するのはもちろん、新入社員などの新しいメンバーは、目標管理制度の目的を理解しないまま形式的な作業になり、制度のマンネリ化を招きかねません。
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