コインチェック、収益で東証に迫る “580億円事件”から完全復活した理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
コインチェックが今、マネックスグループにおける「金の卵」となりつつある。日本取引所グループの四半期利益は125億円で、クリプトアセット事業の89億9600万円と比較するとほとんど両者に差は存在しない。収益性の観点からいえば、コインチェックは日本取引所グループとほぼ遜色のない規模にまで成長している。
将来は東証を脅かす存在に?
今回のコインチェックの復活劇が一時的だと思いたい者もいるかもしれないが、今期の第1四半期に引き続いて第2四半期も好調な推移が想定されている。これまでの収益構造との大きな違いは、やはり仮想通貨のIEO(イニシャルエクスチェンジオファリング)だろう。これは、暗号資産の発行元の委託を暗号資産交換業者が受けて売り出しを行うもので、株式でいえばIPOに近い概念である。
従来は発行元が直接売り出しを行うICO(イニシャルコインオファリング)が主流だったが、法的規制や投資家保護の観点から規制が進み、足元では仮想通貨交換業者による審査を経て上場するIEOが主流になりつつある。
コインチェックは7月1日に国内初となるIEOを提供。そのトークンは4円前後で販売されたが、上場後も値を上げ一時は94.5円と21倍にまで膨れ上がった。株のIPOは一般に2倍のリターンがつけば良い方だが、暗号資産のIEOについては、IPOの時によくみられるオーバーアロットメントやベンチャーキャピタルの大量売却といった相場の“冷却剤”がない場合も多く、需要ベースで価格が決定されやすい。
現状もそのトークンは乱高下を続けており、値崩れのリスクも大きいため本稿でそのトークンの具体的な紹介は控える。なお、コインチェックはこのIEOに際して引受手数料のほか、売り出し時にも8%の手数料を取っており、IEOも同社の収益基盤を強化する事業となるだろう。
このように、マネックスというネット証券の雄による買収・体制改善を経て、売買だけでなく引受・売り出しといった分野においても既存の取引所を圧倒する高収益性と高付加価値を実現していることが完全復活の理由といえるだろう。
流出事件という史上最大のしくじりをみせたコインチェックが、そう遠くない未来に、東証を脅かすプレーヤーになるのかもしれない。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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