これまでになかった「箱型の授乳室」が、じわじわ増えている秘密:週末に「へえ」な話(2/4 ページ)
ショッピングセンターなどで、木製の箱を目にすることはないだろうか。高さは2メートル、幅は1メートル80センチもあって、壁面には哺乳瓶のイラストが描かれている。これは箱型の授乳室で、2〜3年ほど前からじわじわ増えているのだ。その背景に何があるのかというと……。
開発は難航
箱型の授乳室をつくるにあたって、必要になるのは設計図である。高さ2メートルもある箱をつくったことがない長谷川さんは、「まあ、なんとなくこんな感じかな」といった具合に、職人さんに設計図を渡したところ、このように言われた。「こんなモノはできねえよ」と。
完成品のママロは可動式で、移動させることができる。当初からそのように考えていたが、設計図を見ると、床は平面になっていた。つまり、車輪を付けることができなかったのだ。また、箱のサイズを考えると、大きいサイズの車輪が必要になる。そうすると、当初考えていたサイズからどんどん大きくなっていたのだ。
このほかにも、まだある。耐えられる重さとして、女性100キロ、赤ちゃん3〜4キロを想定していたが、安全性を考えれば、その数倍の重さに耐えられる構造にしなければいけなかった。部屋の中で子どもがジャンプするかもしれないし、壁をどんどん叩くかもしれない。あらゆることを想定して安全性に配慮した設計にしなければいけないのに、その視点がスコーンと抜けていたのだ。
「ああでもない、こうでもない」といった感じで、設計図を何度も何度も書き直す。そして、やっとのことで商品は完成。17年10月に発売したところ、いきなり2台も売れたのだ。
発売前、商業施設を運営する会社など10数社にアンケートを行った。ママロの使い勝手や導入したいかどうかなどの設問に対し、好意的な回答が多かった。この結果を受けて、長谷川さんは「これはいける! 資金調達も考えなければいけない」などと考えていたが、その後、6カ月ほど動きがパタリと止まってしまう。一体、何があったのだろうか。
「世の中にないモノ」だったので、担当者の反応はよかった。「ぜひ、ウチでも設置したい」といった声が多かったのに、いざ「決裁」するとなると、話が違ってくる。担当者では決めることができないケースが多かったのだ。では、統括部長クラスはどうか。そこでも承認されず、役員の決裁が必要なところも出てきた。稟議書のハンコが押され、やっと一歩進む。しかし、次の担当者がハンコをなかなか押してくれない。
一進一退の状況が続き、その間にもたくさんの質問が手元に届いた。中でも頭を悩ませたのが「効果を数字で教えてほしい」である。先ほど紹介したように、当初、導入されたのは2台だけ。十分なデータが蓄積されていないこともあって、決裁にどうしても“時間”がかかってしまったのだ。
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