「報連相は部下からすべし」と考える上司が大間違いなワケ:なぜ、あなたの部下は報連相しないのか(2/6 ページ)
ビジネスの基本である「報連相」。上司の中には、「部下が報連相をしてこない」と悩む人も多いのでは。その根幹にあるのは、「報連相は部下がやるべきこと」という勘違いだと筆者は指摘する。
報連相という言葉の起源は、山種証券(現SMBC日興証券)の社長だった山崎富治さんの著書『ほうれんそうが会社を強くする』だといわれています。この本では、報連相は「風通しの良い会社をつくる手段」として考えられていました。
しかし、冒頭の事例はどうでしょう。うまく機能していないどころか、報連相がきっかけで上司と部下のコミュニケーション不和が生まれており、「報連相ができない部下は仕事ができない」という上司すらいます。これでは、強い会社をつくるどころか、今まで以上に上司と部下の関係性が悪くなってしまうかもしれません。
「報連相は簡単だ」「報連相は社会人の基本だ」――。多くの上司や先輩はそう言います。新入社員研修のカリキュラムでも「報連相は大事」と教えている企業は多いと思います。しかし、「報連相」という使い勝手のいいシンプルな言葉だけ伝えて、その目的や、やり方を教えないまま使っていることは多いのではないでしょうか。
先ほども書きましたが、報連相は、上司や同僚などの関係者との仕事の進め方の手法です。つまり「部下からのみするべきもの」ではなく、仕事の上での「コミュニケーションの手法」なのです。しかしながら、冒頭のように「報連相は部下からするもの」と誤解している上司はとても多いのです。こうした「報連相の誤解」が、世の中では多く見られるのです。
では、ここからは、こうした誤解が生んでしまった、報連相の失敗例を見ていきましょう。
報連相の失敗例(1):責任感が阻害したケース
筆者の部下である、A君のケースです。A君は、学生時代から2年近くアルバイトをしていて、そのまま入社した新入社員です。アルバイト時代から社員と同じような仕事ぶりをしていて評価が高く、周囲から「期待の新入社員」と目を掛けられてきた優秀な社員です。
そんなA君が入社して3カ月ほど、どうも元気がありません。そして、ある日A君の周囲への報連相が遅くなり、クライアントに迷惑を掛けてしまうという出来事がありました。幸いにも大きなトラブルにならず何とか収まったのですが、その後、筆者はA君と振り返りを行いました。
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