10%に満たない女性管理職 なぜ「上」に行けないのか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/5 ページ)
女性軽視発言やセクハラについては、多くの人たちが問題にするようになった。しかし「女性リーダーの数を増やす」ことには否定的な意見も多く、結果として女性管理職は8.9%、女性の衆議院議員は9.9%と非常に低い。なぜ女性は「上」に行けないのか。
クオーター制は、ポジティブアクション(アファーマティブアクション)の一つで、もともとは、米国のリンドン・ジョンソン元大統領の演説がきっかけとされています。人種差別を禁じた1964年成立の公民権法の精神を基本とし、これに実効力を持たせるため、主として大統領令に基づき推進されてきた「差別を積極的に是正する措置」です。
どんなに「人種差別はいけません」「肌の色の違いで機会が奪われるようなことがあってはいけません」と啓蒙したところで、差別を根絶することは難しい。そこで強制的に差別される人たちが抱える“重し”を見える化し、それを軽減するための措置や、不利な立場に置かれる人たちの視点がしっかりと生かされるような法令や制度を作りました。
時代の移り変わりとともに、人種などのマイノリティーへの施策から、ジェンダーの視点がクローズアップされるようになり、女子差別撤廃条約が国連で採択されました。ここでは、「事実上の男女の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置」と定義し、これが国際的なジェンダー視点におけるポジティブアクションの定義と理解されています。
要は、「仕方がない」と諦められていたり、「そこに何もない」かのごとく無視されたり、ないがしろにされたりしていた問題点を是正し、「全ての人がより良く生きられるために、全ての人の尊厳を守る」ための、強制的な動きを意味している。
「女性だから」「小さな子どもがいるから」「結婚しているから」といった理由で、雇用や昇進の機会が失われてしまうことがない、全ての人の自由と幸福のための強制的な措置こそが、クオーター制なのです。
ところが、日本ではクオーター制の議論すらまともに行われてきませんでした。掲げられた数値目標は、「実態に即した形」という聞こえのいい言葉で、実質的には消滅しています。
クオーター制を逆差別とする根強い意見がありますが、実際には、国内外の研究でクオーター制を導入した方が「男性の能力が引き出される」ことが示されています。
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