10%に満たない女性管理職 なぜ「上」に行けないのか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/5 ページ)
女性軽視発言やセクハラについては、多くの人たちが問題にするようになった。しかし「女性リーダーの数を増やす」ことには否定的な意見も多く、結果として女性管理職は8.9%、女性の衆議院議員は9.9%と非常に低い。なぜ女性は「上」に行けないのか。
多くの実験研究で、男性の場合、競争相手がいる方がパフォーマンスが向上することが分かっていますが、同じグループに女性がいることで「僕は絶対に競争に勝てる」という自信が高まり、潜在的な能力を発揮しやすくなる可能性が分かっているのです。
日本では、大阪大学などの研究者たちが興味深い実験を行っています(「自信過剰が男性を競争させる」2009年)。
この実験では、グループの男女比にバリエーションをつけ、「全員男性」「全員女性」「男性3人女性1人」「男性2人女性2人」「男性1人女性3人」という5つのグループで、メンバーたちの競争への自信にどのような変化が生じるかを調べました。
その結果、男性は「全員男性」のグループで競争するときは、自信がなくなる傾向が認められたのに対し、女性が競争に加わったとたん競争に勝つ自信が出ることが分かりました。一方、女性では「全員女性」のグループで競争するときには、「勝つ自信」を持てるのに対し、男性が競争に加わった途端、自信がなくなることが分かったというのです。
「勝つ自信」は自分への信頼なので、自己効力感を高めます。人は「自分はできる」と信じる(=自己効力感)からこそ、能力を最大限に発揮できる。集中して、タスクに取り組むことが可能になります。
もっとも、これらは「実験」という特別な環境での結果です。
しかし、男性の自信が「女性が加わることで出る」という傾向は極めて興味深い結果ですし、女性が「全員女性でこそ自信が持てる」というのは、私の経験からも至極納得できます。
長年、女性管理職たちのセミナーをやっているのですが、最初は牽制(けんせい)しあっている女性たちが時間と共に距離感を縮め、悩みを言い合い、互いに励まし合う姿を何度も見てきました。自分より上をいく“同志”に刺激を受け、「もっと頑張らなきゃ!」と自らを鼓舞していました。
そして、最初は「自分がリーダーなんて無理。期待には応えられない」と自信喪失し、管理職になったことを悔やんでいた“女性リーダー”が、同じ立場の女性たちと一緒に過ごすことで、一回りも二回りも成長する姿を目の当たりにしました。
男性の言動が「紅一点」により強化されることは以前から分かっていたのですが、その男性性の強化は「女性を排除することにつながる」という文脈で語られてきました。しかし、それが「クオーター制」を目指す上での男性性の強化ならば、話は別です。「僕は今までだってがんばってきた。女性に負けたくないし、負けるわけがない」と自己効力感を高められれば、男性だけの競争で「自信を失い能力発揮できない」という問題解決の期待にもつながります。
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