高級ブランドの分岐点 EC時代、攻めるグッチと守りのシャネル:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(3/4 ページ)
コロナ禍で、ECの市場が急速に拡大している。EC化には最も遠いと思われていたハイブランドファッションも、「EC化をどう捉えるか」の分岐点に立たされている。グッチ、ルイ・ヴィトン、シャネルなど、各ブランドの戦略の違いとは?
ルイ・ヴィトンとシャネル、対照的な戦略
ケリング・グループとならぶ巨大ファッションハウスのLVMHはルイ・ヴィトンやディオール、ロエベ、フェンディ、ジバンシィー等を傘下に持ちますが、こちらも同様にD2Cに力を入れています。
中でも、ルイ・ヴィトンのWebサイトは比較的UIがよく使いやすいのが特徴で、私の周りの友人たちにも人気です。また、サイト上で購入して、近くの店舗で受け取れるサービスも充実しています。
例えば、サイト上で欲しい商品を購入し、店舗で引き取る際にはその場で箱を開けて中を確認できます。さらに、店舗で他によい商品を見つけた場合にはその場で交換でき、商品の差額はクレジットカードに返金してもらえるのでとても便利です。
サイト機能やオムニチャネル体験を向上させる際に大事なのが、オンラインと店舗の在庫情報の一元化です。ハイブランドファッションでは、ウォルマートのように全ての在庫情報が一元化できているわけではなく、また、Webサイトで購入したあとにキャンセルをする場合、クライアントサービスに電話をかけてキャンセルをしないといけないなど、顧客側にも店舗側にも面倒な手続きが生じてしまう点がボトルネックになっています。
例えば、私の友人がルイ・ヴィトンのオンラインサイトで間違えて複数のバッグを購入してしまい、カスタマーサービスに電話をかけてキャンセルを依頼したところ、「オンラインでの発注は全てオンライン上で行われており、一度オーダーが入るとカスタマーサービスでもキャンセルできない。出荷されてから返却依頼をするしかない」と言われ、非常に不便な思いをしたとのことです。
このような事態を起こさないためには、オンラインでの購入、キャンセル、出荷などの商品の動きとカスタマーサービスがシームレスになることが必要であり、今後ハイブランドがECサイトの顧客体験の向上を目指す上では不可欠な要素になるとも言えます。
一方で、在庫情報を必ずしも一元化しないことで、ロイヤリティーの高い顧客に店舗まで足を運んでもらうという戦略もあります。その代表格がシャネルです。
シャネルは、ハイブランドの中でいまだにハンドバッグやアパレル商品のEC化をしていないブランドです。そのため、バッグを買いたいと思った顧客が店舗に直接足を運び、店員と関係を構築した上で購入する、という伝統的な購入フローを維持しています。
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