水害被害を“リモート”で推測 小型衛星で日本進出したフィンランド「ICEYE」の可能性:世界初(5/5 ページ)
8月は豪雨による被害が多かったが、現地の被害状況把握に役立てられている新技術がある。フィンランドを拠点とする宇宙ベンチャー「ICEYE」は、自社で開発した小型人工衛星により地表を撮影、そのデータをもとにタイムリーな被害推定データを保険会社に提供している。
日常生活に溶け込む「地球観測のプラットフォーム」へ
アイサイでは、全世界の気象情報をほぼ24時間モニタリングするチームがおり、いざというタイミングで迅速に情報を提供できる体制を整えているという。中長期的なビジョンとして描くのは、「地球観測のプラットフォーム」への展望だ。
「現状では詳しくお伝えできませんが、将来インターネットやグーグルマップのように、当社の技術が人々の生活に溶け込んでいる状態を目指しています。そのために、引き続き衛星数を増やし、観測エリアのカバー率、定点データの取得頻度を上げていきたい。ですが、SAR衛星をコア技術としつつ、地球観測に役立つ革新的なアイデアがあれば、なんでもやっていくスタンスです」
直近のタスクとしては、水害以外の災害被害に活用できるソリューションの確立に加え、SAR衛星の解析精度向上を図るために、保険会社や自治体との協業にもチカラを入れていくという。
「解析精度をより上げていくには、洪水発生時、および発生後に地上で収集されるあらゆる被害情報を、当社の解析アルゴリズムに反映させることが求められます。各自治体や保険会社のみなさんと協業することで、お互いにとって好循環が生まれると考えています」
8月15日、1時間に44ミリという激しい雨に見舞われた長野県岡谷市では、裏山が崩れて土石流が発生。墓参りで訪れていた親子3人が巻き込まれ死亡するという痛ましい事件があった。岡谷市は14日夕方に「高齢者等避難」の情報を出していたが、「避難指示」を出したのは災害発生後の15日午前6時だった。
報道取材に対して、岡谷市の今井竜五市長は「考えられる中で高齢者への避難の指示や住民への避難呼びかけを徹底してやってきたつもり。その中でこういうことが起きたので、(発令のタイミングなど)きちっと検証していきたい」と答えていたが、まさに、このような事例でアイサイのSAR衛星技術が役立つかもしれない。気象・地震災害の激甚化が叫ばれる今、テクノロジーの活用による被害防止・軽減を願うばかりだ。
写真提供:アイサイ
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