東海道新幹線「のぞみ」のビジネスパーソン向け「S Work車両」とは何か:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/7 ページ)
JR東海は10月1日より東海道・山陽新幹線「のぞみ」号の7号車を「S Work車両」とし、9月1日より販売を開始した。期間は2022年3月31日まで。ビジネスパーソン向けの指定席として、座席通話、PCの打鍵音などを相互に許容し合う車両となる。ビジネスパーソンへの販促策だが、背景には乗客の多様化がある。
N700S独自のサービスも順次開始
N700Sでは、広帯域の無料Wi-Fiサービス「S Wi-Fi for Biz」が始まる。従来の「Shinkansen Free Wi-Fi」サービスでは30分でいったん切れてしまったけれど、「S Wi-Fi for Biz」は時間制限がないから、長時間の動画視聴、オンライン会議も安心だ。大容量ファイルの受け渡しも可能だろうけれど、ほかのユーザーに影響するので遠慮してほしいところ。
「S Wi-Fi for Biz」は車両に機器搭載工事が必要なため「10月以降順次」となっている。また「S Work車両」に限定せず、N700Sであれば「ひかり」「こだま」でも7号車と8号車で利用できる。8号車は3両あるうちのグリーン車の1両だ。グリーン車に乗るなら8号車がオススメだ。
N700Sでは22年4月以降、7号車の喫煙ルームを改造し、打ち合わせに使える「ビジネスブース」を試験的に導入する。丸椅子を置き、短時間の打ち合わせで利用できる。「S Work車両」であれば、携帯電話の通話も同行者同士の会話もとがめられないけれど、やはり第三者に聞かれたくない話もあるだろうから、これもありがたい。
なお「ビジネスブース」導入に先立って、21年春から東海道・山陽新幹線の16両編成の7号車喫煙ルームは終了予定だ。喫煙者にとって、また厳しい施策となっている。筆者は喘息持ちでどちらかといえば嫌煙だけど、近年の喫煙者締め出しは気の毒に思う。10号車(グリーン車)、15号車(普通車)の喫煙ルームは残るから、こちらも予約時の案内が必要だ。
以上をまとめると、最も快適なビジネス車両は、N700Sを使用した「S Work車両」だ。N700Sを使用する予定の列車は今のところ数が少なく、JR東海の公式サイトで公開されているけれども、「EXアプリ」で予約するときに明示されていない。いずれ全列車がN700Sになるとはいえ、改善してほしい。
関連記事
- “日本一高い”北総鉄道は値下げできるのか 「やはり難しい」これだけの理由
千葉ニュータウンを走る北総鉄道は日本一運賃が高い鉄道の1つ。理由は膨大な建設費が運賃に乗っていたから。しかし6月23日発表の決算には、2022年に累積損失を解消、値下げを検討するとある。値下げされても残念ながら相場より高い運賃が続く懸念がある。そこで筆者が、確実に値下げする方法を考えてみた。 - 定期代が上がる!? 鉄道の“変動運賃制度”が検討開始、利用者負担は
鉄道で「変動運賃制度」の検討が開始された。そもそも、通勤通学定期券によるボリュームディスカウントは必要だったのか。鉄道会社の費用と収益のバランスが、コロナ禍による乗客減少で崩れてしまったいま、改めて考えてみたい。 - 新型車投入の横須賀線、“通勤電車ではなかった”歴史と「車両交代」の意味
JR横須賀線に新型車両のE235系が導入されると話題になっている。横須賀線はもともと軍用路線として建設され、その後、観光に使われる長距離列車、そして通勤電車へと役割が変わっていった。E235系投入は、通勤路線への変化という点で重要な位置付けといえる。 - 中央快速線E233系にトイレ設置、なんのために?
JR東日本の中央線快速で、トイレの使用が可能になることをご存じだろうか。「通勤電車にトイレ?」と思われた人もいるかもしれないが、なぜトイレを導入するのか。その背景に迫る。 - 積み残した2019年の「宿題」 20年の鉄道業界、解決したい“5つの課題”
2020年を迎えたが、鉄道分野では19年から停滞したままの「宿題」が山積している。リニア中央新幹線の静岡工区、長崎新幹線の佐賀県内区間、そして過去の災害で被害を受けた路線の復旧……。20年はこれらの問題解決に向けた動きが進むことを期待したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.