盗まれないの? 東京の「無人果物店」は、なぜ“48時間”にこだわるのか:週末に「へえ」な話(2/4 ページ)
無人店舗が増えてきた。テクノロジーの進歩や人手不足などが背景にあるようだが、筆者が気になっているのは「無人果物店」である。どんなビジネスを展開しているのかというと……。
原因は「流通にある」
有井さんに、無人販売所を始めた理由を聞いたところ、次の言葉が返ってきた。「僕は山梨県で生まれ育ちまして。地元にいたときには、スーパーなどで果物を買ったことがなかったんですよね」。大阪で生まれ育った筆者にとって「果物はスーパーで買うもの」と思っていたので、この言葉にはちょっとびっくり。では、どうやって手にしていたのかというと、近所の農家さんから買っていたり、もらったりしていたという。
このような生活を送っていたので、有井さんはスーパーで果物を買ったことがなかったわけだが、上京したときにショックを受ける。子どものころに食べていたのは完熟果物だったのに、東京のスーパーで購入したモノは違う。なぜ同じ果物なのに、味に「違い」があるのか。気になった有井さんはその謎を解いていくうちに、原因は「流通にある」ことが分かってきたのだ。
スーパーの棚に並ぶ果物は、農家が収穫して数日たっていることが多い。一般的には、農家→出荷団体(農協など)→卸売市場をへて、消費者はようやく手にすることができるわけだが、その時間を逆算すると、現地ではまだ未熟な状態で出荷しなければいけない。それは仕方がない面もある。多くの消費者が「ぶどうを食べたいなあ」と思ったときに、店頭に黄緑色のシャインマスカットが並んでいなければいけない。機会損失を防ぐためにも、必要な量を必要なときに並べておかなければいけないからだ。
だが、しかしである。完熟の果物を食べて育ってきた有井さんは、この仕組みに納得することができなかった。「甘くておいしい果物を、東京で暮らす人にも届けることはできないか。できれば収穫して、48時間以内のモノを届けたい」と考えたのだ。
とはいえ、この問題をすぐに解決することは難しい。おいしい果物をつくっている農家は、高級ホテルなどと契約していて、その間に割り込むことができない。有井さんは「買いたいのに、買えない」状態が続いていたのだ。
しかし、転機はやってきた。新型コロナウイルスの感染拡大である。「こだわりの果物を直接都内のお店に卸していた農家さんほど、コロナの影響を受けていまして。厳しい状況が続いていたので、その果物を購入することはできないか。そして、私たちが東京に運んで、無人販売という形で運営すればやっていけるのではないか」と考え、エフスタンドが生まれたのである。
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