連載
ホテル1室のアメニティー、清掃費用は一体いくら? ホテルの気になる“原価”あれこれ:瀧澤信秋「ホテルの深層」(4/5 ページ)
コロナ禍で価格が下がっているホテル利用料金。そもそも原価はどのくらいなのだろうか。運営会社に取材を試みた。
客室清掃費で大きな違いが
他方、特徴的だった運営会社が1社。同社から開示された数字は以下の通りである(小数点以下は切り捨て)。
宿泊特化(ビジネスホテル)タイプの場合
シングルルーム1室
アメニティー費91円/リネン費191円/客室清掃費853円 計1136円
ツインルーム1室
アメニティー費91円/リネン費374円/客室清掃費853円 計1318円
※シングルでもダブルユースでは2人分のアメニティーを用意するためアメニティー費が同額となる。
リゾートタイプの場合
アメニティー費310円/リネン費332円/客室清掃費1580円 計2222円
この会社と、前にまとめとして例示したホテルとの大きな差が「清掃スタッフの人件費」である。他のホテルが400〜600円というところ、この会社では900円前後と1.5倍ほどになっている。他社との違いを確認すると、同社では清掃スタッフを全て自社雇用していることが分かった。一例として掲げておく。
こうしてみると、シンプルなビジネスホテルでもリネン・アメニティーに人件費を加えると最低1室1000円台前半は要していることが分かった。しかし原価はリネン・アメニティーや人件費だけで済む話ではない。
客室単位でいえば、光熱費や予約サイトへ支払う手数料もあるだろう。別にオーナーがいれば賃借料もあるし、国や自治体に納める公的負担も発生する。コロナ禍の値下げ合戦で2000円台というビジネスホテルの例を先述したが、原価を知るにつけシビアなホテル運営の現場を見るような気分にもなる。
関連記事
- バブルの名残 温泉街の「大型施設」が廃墟化 鬼怒川と草津の違いと「大江戸温泉物語」の戦略
コロナ禍がもたらす温泉街への影響は甚大だが、「温泉の魅力」として考えさせられるのが“街づくり”という点だ。筆者は「施設そのもので集客できる強い宿は例外的で、温泉地の魅力自体が集客を左右する」と指摘する。 - “はがれにくい”けど“はがしやすい” なぜ業界トップのアヲハタは2年かけて「のり」を開発したのか
アヲハタジャムのラベルが剥がしやすいらしい。なぜ? - ホテル業界復活のカギは「朝食」にあり? コロナ禍でヒルトンが進めた115項目の改善
ホテルにとって朝食はキモ。“朝食でホテルを選ぶ”人も多いだろう。人気の尺度という点で朝食の良しあしは注目されるポイントになっているのは事実だ。筆者はソーセージと焼き鮭に注目する。 - コロナ禍でも黒字のアパホテル 常識破壊の”強さ”と悲願の10万室が生んだ“功罪”
アパホテルが2021年5月10日に創業50周年を迎えた。いまや日本を代表するホテルブランドとして圧倒的な知名度を誇る同社。コロナ禍の中、2020年11月期連結決算で黒字を確保したという発表は、ホテル評論家としても衝撃的だったと筆者は語る。 - 寮発祥のドーミーインが「大浴場」をどんどん展開するワケ 手掛ける「和風ビジネスホテル」とは?
「宿泊施設のカテゴリーボーダーレス化」が進んでいるが、ドーミーインのサブブランド「御宿 野乃」もそのひとつだろう。 - 爆増した3万ブース超のカプセルホテル “ブーム終焉”の理由はコロナ禍だけじゃなかった
近年、訪日外国人旅行者の激増により宿泊施設不足が露呈、数多くのホテルなどが誕生した。施設数で群を抜いていたカテゴリーが「簡易宿所」といわれる施設で、その代表格が「カプセルホテル」や「ホステル」と呼ばれる宿泊施設だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.