家具・家電のサブスク「CLAS」の売り上げが、3倍ペースで伸びているワケ:採算より「ビジョン」を優先(3/6 ページ)
家具・家電のサブスクリプションサービス「CLAS」(クラス)は、9月に総額約21億円の資金調達を発表した。毎年3倍ペースで成長している同社は、この資金調達でさらなる事業規模の拡大を狙う。どのような暮らしの未来を描き、どのような戦略で事業成長を遂げてきたのか。
採算より「ビジョン」を優先する事業戦略
現在、クラスはサービス開始から3周年を迎え、毎年3倍以上の規模で成長しているという。場所を選ばずに働く「ノマドワーカー」や、特定の住所を持たない「アドレスホッパー」の増加、さらにはコロナ禍によるテレワークの普及など、クラスの拡大を支える要因は十分にある。久保氏も「生活様式の変化が事業成長を後押しした」と話す。
とはいえ、いまや同様のサービスを扱う競合他社は少なくない。最短1カ月からレンタルでき、全国への迅速な対応も魅力の「クロネコおまかせレンタル」や、リーズナブルな料金プランと豊富な取り扱い商品で評価を得る「楽天レンタル」など、消費者の選択肢は増えている。そんななかで、同社はどんな戦略を取っているのだろうか。
「何よりプロダクトファーストであることを重視しています。品質の高い商品とユーザーにとって損のない価格設定、それを支えるインフラやオペレーションをしっかり固める。ユーザーが心地よく使えるUXを作り上げることを圧倒的に優先し、マーケティングや事業成長は二の次。そこから、リファーラル(紹介)が生まれるなど顧客の増加につながっています」
ブランディングにもこだわりが見える。目先の売り上げより、ビジョンを貫くことに価値を置いているそうだ。
「世界観を醸成するために、社内の認識を一致させることを大事にしています。特に初期のころは、自社の機能的価値、情緒的価値、それらを統合し他社と差別化した強みを一枚絵にして、メンバーに示し続けました。
『常にビジョンに立ち返ろう』とも言い続けていて、意思決定で判断が割れたときは、目先の利益よりビジョンに合致するかどうかで選びます。多少のリスクを背負ったとしても、それは後からいくらでも巻き返せると考えています」
ビジョンを重視するからこそ、競合他社では当たり前に導入している「買い取り」を提供しない方針も。
「モノを持たない軽やかな社会を目指しているのに、買い取りを提供してしまうと、ビジョンと一致しなくなります。売り切ったほうが経営は断然ラクだと思いますが、ビジョンが優先だからやらないという考えです。ただし、法人ユーザーに限り買い取りを提供するケースはあります」
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