サントリーの「ほろよい」はなぜ91種類もあるのか 商品開発のキモは2つ:週末に「へえ」な話(2/4 ページ)
サントリーの「ほろよい」が売れている。低アルコールのRTD市場でトップを独走しているわけだが、なぜ多くの消費者から支持されているのか。開発の背景を取材すると、2つのキーワードが浮かんできた。
“お酒の入口”として開発
「ほろよい」を飲んだことがない人もいると思うので、商品について簡単に紹介しよう。産声をあげたのは、2009年3月のこと。開発は2年前から行っていたわけだが、どんなところに注目していたのだろうか。当時の報道を見ると、『若者 お酒も「味覚の幼児化」』『苦いビール苦手』(読売新聞 2008年9月)、『職場飲み減り、ビール離れ加速』(日経MJ 2007年8月)など、若い人のお酒離れが話題になっていたのだ。
飲用シーンも他の年代と比べ、変化がうかがえた。平日にお酒を飲む時間帯を見ると、40代は「午後8時 食事と一緒に」という人が最も多いが、20代は「午後10時 食後・くつろぎの時間」が目立った。お酒に求めることを聞いても、20代は「くつろげる」「軽く飲める」と答えた人が多かった。
マクロミルが行った調査によると、お酒に求める味は、20代男性の81%が「甘め」と回答。ちなみに、全体で「甘め」と答えたのは53%だったので、当時の若い男性が突出して「甘め」を好んでいたことがうかがえる。
若い人の味覚が変化している。そーいえば、このころに「草食系男子」という言葉も生まれたっけ。時代の空気がなんとなく変わろうとしていたが、飲料メーカーとして「お酒離れ」は無視できない問題である。苦いビールが敬遠されているからといって、すべてのアルコールが拒否されているわけではない。居酒屋などで提供されているチューハイの売り上げは好調で、その度数は3%台のモノが多い。冷たくて刺激の強いチューハイではなく、「やさしい甘み」「低アルコール」であれば、若い人たちに受け入れられるのではないか。
さらに「昔から飲み慣れた味わい」であれば、“お酒の入口”として支持されるかもしれない。若者の味覚や価値観の変化などを参考にして、サントリーは09年に「ほろよい」の「レモン」と「うめ」を発売したのだ。
結果、どうだったのか。上々の滑り出しだった。翌年、「白いサワー」「ぶどうサワー」を発売し、その後もさまざまな種類を投入することに。「そーいえば、スーパーの棚にたくさんの種類があるなあ」と思われたかもしれないが、これまでどのくらいの商品を開発してきたのだろうか。ひー、ふー、みー、よー、と数えたところ「91種類」である。商品を発売して、今年で12年目。ということは、年に「7本」ペースで開発したことになるのだ。
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