ワークマンの再来か? キャンプ用品の雄「スノーピーク」が来店減でも大幅増収・増益を達成できた理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
業界で密かに「ネクスト・ワークマン」とささやかれているのが、スノーピークである。同社はビギナー層からベテラン層まで幅広いキャンプファンから支持を集め、アジア圏やキャンプの本場でもある米国でも勢力を拡大している企業でもある。
スノーピークとワークマンの戦略
同社はワークマンと同様に、郊外もターゲットに置いた出店戦略をとる。しかし、両社の店舗展開を確認すると、それぞれの戦略の違いがうかがえる。ワークマンは都心から等間隔・放射線状な幾何学模様を描くが如く出店している。一方で、スノーピークは都心部と郊外、そしてそこからさらに離れたエリアにも分散して出店している点で違いが見られる。
都心部への出店にも重きを置くスノーピークは、コロナ禍に見舞われた前期20年12月期から今21年12月期の第3四半期(2021年1〜9月)にかけて来店客数の回復が鈍く、売上高への悪影響も懸念されていた。しかし、ふたを開ければ2年連続の大幅増収増益を達成することができたのだ。
同社はコロナ禍々で増収増益を達成できた理由として、「今年の3Qは緊急事態宣言などの影響で店舗の来店客数の回復が限定的であったが、目的を持って来店をされる方が多かったことから、都市部の直営店においても売り上げは増加」と分析している。これは、「計画購買」と「衝動買い」という消費者の行動からも説明がつくだろう。
スノーピークは都心部にも展開しているが、これらの店舗は多くの来店客数が見込める半面、事前にそのお店で買い物を計画しているよりも“ついで”に来店するような顧客の割合が増加する傾向にある。人流が多い分、都心部ではたまたま入ったお店にいいものがあって購入するという「衝動買い」の割合が高まるわけだ。しかし、客数と売上高により高い相関を示すのは、あらかじめこのお店で何を買うか決めてから来店する「計画購買」の客層にある。
この点について、確かに実店舗型で営業を行うスノーピークにとってコロナ禍が来店客数に影響を及ぼした。しかし、コロナ禍は副産物として人々のキャンプ需要を高めた。その結果、減少した多くの顧客は「衝動買い」層であり、名目の来店客数が小さかったとしても「計画購買」層の濃度が高まった結果、トータルでの売上高が増加したというわけだ。
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