ワークマンの再来か? キャンプ用品の雄「スノーピーク」が来店減でも大幅増収・増益を達成できた理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
業界で密かに「ネクスト・ワークマン」とささやかれているのが、スノーピークである。同社はビギナー層からベテラン層まで幅広いキャンプファンから支持を集め、アジア圏やキャンプの本場でもある米国でも勢力を拡大している企業でもある。
海外の伸びが顕著に
もう一点、スノーピークとワークマンの大きな違いは、海外売り上げの有無である。
ワークマンは仕入・生産というコスト面で海外を活用しているのに対し、スノーピークはブランドの海外展開にも積極的で、海外売上高比率は足元で2割程度まで伸びている状況だ。国別で見ると韓国・米国・英国での伸びが著しい。
韓国における売上高は、第三四半期までの累計で17.2億円と前年同期比で+72%も伸張している。米国は13億円と、前年同期比で+80.5%だ。英国は3.3億円と小粒であるものの、前年同期比では4.12倍と成長率の点ではトップクラスを誇っており、世界的なキャンプ需要の受け皿としてスノーピークが選択され始めている様子がうかがえる。
日本単体では前年同期までの売上高90.9億円が今年は141.2億円と、55%ほどの成長となっていることから、海外での売上拡大が日本を上回る勢いとなっていることが分かるだろう。
スノーピークの強みとしては会員システムに根付いたファン層の囲い込みにあるが、米国・英国においては同社の会員システムが準備中であるにもかかわらず高い成長率を誇っている。そのため、アジア圏と同様に会員システムが整備されれば、マーケティングや顧客分析の点でさらなる伸び代があるとも考えられる。
日本では過去の話題のようになりつつもあるコロナ禍であるが、グローバルな視点ではいまだに終息の兆しも見えない国々で溢(あふ)れている。世界的に見た場合、新たな生活・娯楽様式としてのキャンプは今後も拡大を続けていくのかもしれない。
ちなみに、スノーピークの大株主に、創業一族の資産管理会社とみられる「雪峰社」という会社がある。雪(スノー)と峰(ピーク)で雪峰社ということであろうか、その名付けからは、趣味が高じて金型メーカーからアウトドアメーカーに転身した山井一族のお茶目な側面も垣間みえてくる。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
Twitterはこちら
関連記事
- “人類未到のお金持ち”イーロン・マスク、個人資産がトヨタ自動車の時価総額上回る
世界一のお金持ちといえば、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が長らくその象徴といえる存在であった。そんなビル・ゲイツ氏は、今年4月に公表されたフォーブスの世界長者番付2021年版で4位に位置しており、「世界のお金持ち」の構図も随分と様変わりしたようだ。 - コインチェック、収益で東証に迫る “580億円事件”から完全復活した理由
コインチェックが今、マネックスグループにおける「金の卵」となりつつある。日本取引所グループの四半期利益は125億円で、クリプトアセット事業の89億9600万円と比較するとほとんど両者に差は存在しない。収益性の観点からいえば、コインチェックは日本取引所グループとほぼ遜色のない規模にまで成長している。 - 大赤字で“株価暴落中”の出前館、これは「良い赤字」か「悪い赤字」か
コロナ禍による巣ごもり消費の追い風を受け、急速に対応エリアと店舗を拡大している出前館。しかし、25日に発表された出前館の決算は惨憺(さんたん)たる結果として市場に受け入れられた。コロナ禍を経て赤字が7倍以上も膨らんだことになる。 - 今、いきなり!ステーキが「大復活」の兆しを見せている理由
いきなり!ステーキは、にわかに”大復活の兆し”を見せている。これはペッパーフードサービスにおける半年間の株価推移を見れば明らかだ。同社の株価は、5月半ばから上昇に転じ、今では1月の安値から2倍以上となる512円で推移している。 - アイフルの好決算から考える、コロナで二極化する家計のリアル
消費者金融大手のアイフルが、著しい業績改善を見せている。5月に発表した2021年3月期決算によれば、グループの連結営業利益は前期比で約9.4倍となる175億円の黒字となった。 - パナソニックの優秀人材流出、早期退職制度は人材の“焼畑農業”だ
パナソニックは10月1日、9月末で1000人以上の従業員が早期退職制度を利用して退職したことを発表した。“特別キャリアデザイン”というキレイな名称も、結局は対象の社員に「給与を下げるか、お金をもらって辞めるか」という選択を強いているものに過ぎない。この制度で、活躍が期待されていた優秀人材まで退職してしまったという寓話のような顛末となっていることも気がかりだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.