車検制度はオーバークオリティー? 不正も発覚した日本の車検の意義:高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)
自動車メーカーが、生産工場からの出荷時に行う完成検査で不正をしていたことが明らかになったのは2017年のことだった。そして今年は、自動車ディーラーでのスピード車検で不正があった。日本の乗用車に関する法整備は昭和26年(1951年)に制定された道路交通法、道路運送車両法によって始まっている。その中には幾度も改正されている条項もあるが、全てが実情に見合っているとは言い難い。
「車検に出す」のは実は点検に出している
さて、一般的なユーザーが車検を受けるのは、有効期限を迎えた車両を検査してもらうことで、再び公道を走行する許可を得るためだ。これは継続検査と呼ばれているもので、日本中の陸運支局に併設されている車検場や民間車検場(一定の設備を有した指定工場)で受けられる。ちなみに車検の正式名称は「自動車検査」である。
車検を受けるためには、乗用車の場合24カ月の法定点検を受ける必要がある。これは12カ月、24カ月の点検としてそれぞれ点検項目も決められているものだ。24カ月点検では、ブレーキなど重要保安部品の分解整備による点検も含まれている。
ただしユーザー車検の場合は車検取得後に点検整備を施す、後整備も可能になっている。これはユーザー自身が車検を受けた後に、整備業者によって点検整備を受けることを可能にした措置だが、検査合格後にキチンと点検整備を受けているかが問題視されている。
車検に合格したことで整備の必要がない、と勘違いしてしまうユーザーもいるようだが、車検と点検整備は別だ。車検とは、その後2年間の安全を保証するものではなく、あくまでも検査時に規定に合致しているか確認するだけのものにすぎない。
ディーラーは2年先とはいわないまでも、1年以上は問題なく乗り続けられるようにブレーキパッドなどの消耗品の寿命を考えて交換する。それはユーザーが安心して乗り続けられるための配慮でもあるのだ。
しかし整備業者の中には、ディーラーよりも格安と謳(うた)い、車検合格だけを請負うようなビジネスを展開しているところもある。それはそれでビジネスとして成り立っているように見えるが、これは車検というクルマの安全性を確保する手段を安易に利用しているともいえる。
冒頭の完成検査やスピード車検の不正と同じ、もともと持つクルマの品質の高さを利用したグレーゾーンのビジネスには問題がある。法律が今のクルマの品質にそぐわないというのであれば、法律を変えるべきなのだ。そうすれば不正な検査は減らせる。
本来、クルマの安全性を確保するための制度である車検が、単に合格させることを目的とするビジネスに変わってきつつあるのが、近年の一つの傾向だろう。ならば車検とは、何なのかという気も起きてくる。
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