新生ハンズが地方に大量出店? 「王者」カインズの東急ハンズ買収から見える、意外な未来:ニトリの背中も見えてきた(2/4 ページ)
業績不振に苦しんでいた東急ハンズを、ホームセンター業界の王者・カインズが買収する。ニトリの背中も見えてきた同社は、かつて時代のトレンドを生み出してきたハンズをどう変化させるのか。
昔のハンズは、珍しい機能を追求した商品やDIY的な商品群がかなり多かったが、いわゆる駅ビル、ファッションビル的なモールを出店場所の中心としていったことで、多くの店舗が女性向けおしゃれ雑貨、あるいは文具店のような構成になっている。来店客層からすれば妥当な品ぞろえなのであろうが、この戦略により、他の雑貨チェーンとの差別化度合いが、かなり薄くなってしまったように思われる。
知られざる強豪「ベイシアグループ」とは何者か
そんなハンズを新たに傘下に入れたのは、「DIY文化の共創のパートナー」として迎え入れると表明した、ホームセンター業界最大手のカインズ。大都市圏の住民からすれば、カインズは「地方のホームセンター」という印象かもしれない。カインズが属するベイシグループは、非上場企業が多く、ホールディングス化もしていないため、情報露出が少ないのであるが、実は知る人ぞ知る有力流通グループである。
群馬県伊勢崎市から発祥したスーパー「いせや」(現ベイシア)を祖とするベイシアグループは、カインズ、ベイシア、そして最近売り出し中のワークマンなどで構成される。グループ企業の売り上げは合計1兆円を超え、さらに拡大を続けている。イオン、セブン&アイ・HD、ファーストリテイリング(ユニクロ、GU)、ヤマダHD(ヤマダデンキ)、パン・パシフィック・インターナショナルHD(ドン・キホーテ)に次ぐ、国内6位相当の流通企業集団だといえば、イメージが湧くかもしれない。
この隠れた巨大流通企業群ともいえるベイシアグループは、これまでほとんどM&Aを行うことなく、自前の出店で成長を遂げてきており、今回のハンズが初の大型買収になる。この動きは、ニトリによるホームセンター「島忠」の買収、マツキヨココカラ&カンパニーの誕生、あるいはH2O対オーケーストアの関西スーパー争奪戦などにも共通する大都市マーケット争奪戦の側面も持っている。
地方エリアで全国展開を進めるカインズは、既に北海道から九州まで店舗網を広げており、自前出店のみで着実な成長を続けてきた。
ホームセンター業界は、合従連衡を続けるDCMHDが最大手企業となっていたが、カインズが特にM&Aすることなく、近年トップシェアを奪還した。まさに業界における絶対王者とも呼べるカインズではあるが、大都市圏はホームセンター需要が薄く、また大型店舗を出せる場所が少ないことから、店舗網は手薄だ。従って今回のハンズ買収は、カインズにとって大都市圏攻略の重要な橋頭堡を築いたということでもある。
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