平均60.3歳──老いる社長、緩やかに進む「会社の自殺」:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
社長の高齢化が進み、ついに平均年齢は60歳を上回った。「高齢だからダメ」ということはないが、社長という“権力の座”に同じ人が長く座ることで、組織にはさまざまな弊害が出てくる。
最近は、事業継承の相談窓口を設置し、無料でサポートする地方自治体が増えていますし、4年連続で不在率は低下。私が以前、インタビューした小企業でも、M&Aで事業継承しています。
中小企業では後継者を育成したり、選んだりすることの難しさがあるのは事実です。
でも、「社員のためにも、絶対に会社を終わらせていけいない」と走り回っている社長さんは、後継者問題を事業戦略と捉え、いい形で次の世代に受け継いでいます。しかも、そういった企業の社長さんの多くは、退任した後も、縁の下の力持ちとして新体制を支えています。
どの企業の社長さんも現場との距離感が近く、「なぜ、自分の会社が存在しているのか?」という会社のアイデンティティーを全社員で共有していました。
問題は「社長の年齢」であって、「年齢だけ」じゃない。
どんな企業も、現場を支えてきた「名もなき英雄」たちがそれぞれのミッションにとことん向き合ったからこそ「今」がある。過去と今があって、初めて輝かしい「将来」につながっていくという、経営の基本を大切にしているかどうかの問題です。
その結果の一つとして、「社長の椅子の受け渡し」が行われているのです。
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河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)がある。
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