TOTO USA副社長に聞く ウォシュレットの販売台数を倍増させた秘密:赴任当時トイレの話はタブーだった(3/5 ページ)
TOTOの温水洗浄便座の売上高が、2019年あたりから大幅に伸びてきている。コロナ禍という特殊事情で注目された面もあるものの、好調の裏にはTOTOの知られざる地道な努力があった。販売の最前線に立ってきたTOTO U.S.A., INC.の野嶋克仁副社長に、売れ出した要因と今後の展望を聞いた。
「トイレまで電化製品を持ち込んできた」と笑われた
――温水洗浄の便座をプレゼントするような需要もあるようですが。
アマゾンでは年末に子どもから父母へのプレゼントとして贈ることもあるようで、年末のギフトキャンペーンの時はこの商品の売り上げが上がります。これは子どもが先に使ってみて良かったから、親にも使ってみてというもので、こうした形でも需要が増えてきています。
プレゼントとしてもらったら、お父さんが自分で据え付けられるように、米国のウォシュレットは手で便座のネジが締められるなどDIYに対応した仕様になるよう変更を加えています。
――米国ではトイレは浴室のそばに置かれるため、ウォシュレットを設置するためにコンセントを付けると漏電の恐れがあるとして、敬遠される傾向があると聞きます。そのあたりの対策はどうしているのでしょうか。
漏電防止のため、トイレにはコンセントがないことが多いですが、最近は髭そり、電動歯ブラシ、スマートスピーカーなどをバスルーム(洗面所)に置く人も多くいるのでコンセントの数は増えてはきました。米国の住宅市場は改築が多いので、改築の時にコンセントを増やすこともありますが、トイレにコンセントがないことがウォシュレットを普及させる上で足かせになっていた部分はあります。
――温水便座の認知度が上がったのは、メディアの記事などにより、コロナ禍でビデを使いましょうという雰囲気が出たからなのでしょうか。
米国で温水洗浄便座の一般名詞として一番使われているのが「ビデシート」という名称で、ウォシュレットもこれに含まれています。これにより、今まで知らなかった人も温水洗浄便座がどのようなものかを知るようになり、使う人も多くなってきています。
――米国メディアのウォシュレットを見る目も変わってきたということでしょうか。
20年前までは、日本のメーカーは「トイレにまで電化製品を米国に持ち込んできた」と笑われました。私が赴任して一体型の高級なウォシュレットを売ろうとしたときは「ロールスロイス」といわれて、少しトレンドが変わってきたと感じました。日本やアジアで普及しており、生活を豊かに、快適に感じる良い商品だ、というポジティブな情報として取り上げられました。以前のように面白おかしくという形での紹介ではありませんでした。
関連記事
- 「希望退職を募集することになったら、私はJALを辞めます」 日本航空・菊山英樹専務
コロナ禍による国際、国内の旅客数減少が長期化して日本航空(JAL)は苦しい経営が続いている。経営破綻後に当時の稲盛和夫会長(現在は名誉顧問)から経営のやり方を巡って叱責された経験がある菊山英樹専務にインタビューした。 - 上場企業の「想定時給」ランキング、3位三井物産、2位三菱商事 8000円超えで「ぶっちぎり1位」になったのは?
上場企業の「想定時給」ランキング……。3位三井物産、2位三菱商事に続き「ぶっちぎり1位」になったのは? - 「年商1億円企業の社長」の給料はどれくらい?
「年商1億円企業」の社長はどのくらいの給料をもらっているのか? - 「この企業に勤める人と結婚したい」ランキング トヨタ自動車、任天堂をおさえての1位は?
「この企業に勤める人と結婚したいランキング調査」。1位は「地方公務員」(28.6%)だった。 - 富士通・時田隆仁社長に聞く「年収3500万円」の運用状況 みずほシステム障害への対応は?
富士通の時田隆仁社長に、今後の事業展開の方向性を聞いた。 - ヤマト運輸が舵を切るデータ・ドリブン経営 “DX請負人”の中林紀彦執行役員を直撃
ヤマト運輸が顧客サービスを改善しようと、宅配に関する膨大なデータを駆使したデータ・ドリブン経営に舵を切っている。その仕掛人であるデジタルデータ戦略担当の中林紀彦・ヤマト運輸執行役員を直撃した。 - リニアを阻む静岡県が知られたくない「田代ダム」の不都合な真実
静岡県が大井川の減水問題などを理由に、リニア中央新幹線の建設工事に「待った」をかけ続ける一方で、「黙して語らない」大量の水がある。静岡県の地元マスコミも触れられない「田代ダム」の不都合な真実を追った――。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.