ハラスメント? マネジメント? マネジャーは「部下のプライベート」にどこまで踏み込むべきか:事例で解説(3/5 ページ)
リモート化の進展などで前景化しているコミュニケーション問題。例えば、上司としては、どこまで部下のプライベートに踏み込んでよいものか、悩ましいものだ。本記事では、人事領域に長年携わってきた筆者が目にした事例を基に、この問題を探っていく。
ケーススタディー(2)プライベートな悩みを部下が抱え込んでしまったケース
ある会社のシステム開発部でマネジャーを務めるCさんに、部下であるDさんから退職の申し出がありました。Dさんは「一身上の都合」と告げるだけで詳細な理由が分からないので、Cさんから人事の筆者へ、「一緒に面談してほしい」と相談が寄せられました。
早速Cさんと筆者で、Dさんとの面談を行いました。「プライベートなことでも力になるので辞めたい理由を話してほしい」と伝えると、Dさんは「会社に迷惑が掛かるので……」とつぶやきました。
「社員は家族みたいなもの。会社はできる限り、対処したいと思っているので、話してほしい」と伝えると、Dさんは、涙を流しながら少しずつ、事情を話し始めました。
Dさんの両親は離婚していて、現在は父親と同居しているそうです。父親は借金癖があるらしく、自宅に消費者金融の督促状が届いたり、電話がかかってきたりしていました。先日、いよいよ消費者金融の担当者が自宅に来て、「このままでは会社にも迷惑を掛けることになるかもしれない」と思い悩み、退職を決意したそうです。
そして「会社も仕事も大好きです。でも、大好きな会社だからこそ、自分の問題で迷惑を掛けるのは耐えられない」と、Dさんは話してくれました。誰に相談すればいいかも分からない、と1人で悩んでいたそうです。
Cさんと筆者は「会社としてプライベートの問題を直接解決できないかもしれないけれど、解決方法を一緒に考えることはできる」と伝え、Dさんの了解を得た上で、会社の非常勤役員に専門の弁護士を紹介してもらうことになりました。
面談後、Cさんに「これまでDさんは悩んでいる様子はなかったか?」と聞いたところ、「そもそもDさんは自分のことを話すタイプではないので、コミュニケーションはあまりとっていませんでした。逆にプライベートな部分に踏み込むのはよくないと思っていました」と話していました。
その後、Dさんのトラブルは解決し、会社に残ることになりました。
部下のプライベートでの出来事は、直接的に仕事へ関係ないものかもしれません。しかし、生活の中でプライベートと仕事を切り離して考えるのは難しいものです。プライベートな問題が解決できなければ、この事例のように仕事に影響を及ぼしてしまうこともあります。
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