三菱地所にいながら「瞑想施設」を立ち上げた若手社員の描いた世界:働く人の日常には「余白」が必要(2/3 ページ)
三菱地所の新事業提案制度から生まれたメディテーションスタジオ「Medicha(メディーチャ)」。三菱地所という大企業の中で、同スタジオはどのように構想され立ち上がったのか。後編ではその経緯について創業者の山脇一恵さんと長嶋彩加さんに聞いた。
「日本でメディテーションが成立する」 手応えを感じた瞬間
17年度の新事業提案制度の応募を決めた当時、長嶋さんは大手町・丸の内・有楽町エリアのオープンイノベーションを担当する街ブランド推進部オープンイノベーション推進室所属、山脇さんはビルの賃貸営業をするビル営業部に所属していた。
二人は新規事業に挑戦するからには本業でもしっかりと成果を出そうと約束し、仕事終わりや土日の時間で事業プランを練った。品川のカフェで自分たちのありたい生活と、これからの世の中についてお互いに意見を交わし、店が閉まり帰宅してからもお互いの家の近くで夜が更けるまで話し込んだ。同時に、自分たちの目指すイメージに近い国内外のサービスをベンチマークしていった。
その結果、明確になったのが「もっと自分らしく、やりたいことは全部やる=ビュッフェ型のライフスタイル」を広めたいという思い。このビジョンを17年8月の一次審査でプレゼンすると無事に通過。ファイナリストに残ると、同年12月の最終審査前に事業化のための予算と時間が与えられる。
最終審査までの期間、二人はまず自分たちのつくりたい世界観と事業プランを再検証する作業から着手する。国内外のサービスのリサーチをするなかで、大きなヒントになったのがニューヨークの事例とそこで働く人たちの考えだった。
「現地を訪れると、マンハッタン内に複数のスタジオが立ち並び、ビジネスパーソンから主婦まで幅広い層がメディテーションの施設を利用している姿を目の当たりにしました。自分らしく仕事・夢・家族を大切にするには、エネルギーが必要です。そのために、ニューヨークの人たちはライフコーチに相談したり、毎週メディテーションやカウンセリングに通ったりと、セルフケアの文化をすごく大事にしていることが対話する中で分かりました」(山脇さん)
帰国後、メディテーションに絞りリサーチを進めると、そこには確固とした市場があり、国内でも成長していく未来が見えた。テーマが決まると、すぐに想定顧客を定めインタビューを始める。
「当時Medichaのターゲットにしていた『都会で忙しく働く女性』を知人のツテをたどって紹介してもらっては1on1のインタビューをお願いしました。インタビューの場では、サービス内容をビジュアル化した資料を見せて意見をいただくことで課題とニーズを探っていきました」(長嶋さん)
このサービスを磨き込み、事業化したら伸びるのではないか。そんな確かな手応えを感じ始めたのは見込み客を集めて開催したメディテーションの無料体験イベントだ。イベント集客は開催5日前、自身や知人の協力を得てSNSで告知し、55人が参加。イベント後に用意したアンケートの回答を見ると、満足度は軒並み高得点だった。
「アンケートの回答や当日の参加者との会話から、何をどこまでやればサービスとして成立し得るかということと、具体ターゲットのペルソナも見えてきました」(山脇さん) こうした内容に加えメディテーションスタジオを展開することを記載した事業プランを12月の最終審査で提出、プレゼンすると採択される。
翌18年度からは店舗オープンに向けてプランを進め、同年10月の事業化に係る社内審議ではメディテーションをベースにしたステップ・空間演出をサービス化することと、ターゲットのライフスタイルの延長線上を考え都心の中でも閑静な南青山を一号店の場所に選ぶことを提案。審議が通ると、すぐに工事着工し19年6月にスタジオがオープンする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
三菱地所の30代社長がつくった「瞑想プログラム」がコロナ禍で予約殺到なワケ
三菱地所の新事業提案制度から生まれた没入体験型メディテーションスタジオ「Medicha(メディーチャ)」がコロナ禍で活況だ。コロナ禍で一時は休業を迫られていた状況から一転、なぜ売り上げを伸ばせたのか。Medicha共同代表の長嶋彩加さんと山脇一恵さんに聞いた。
「希望退職を募集することになったら、私はJALを辞めます」 日本航空・菊山英樹専務
コロナ禍による国際、国内の旅客数減少が長期化して日本航空(JAL)は苦しい経営が続いている。経営破綻後に当時の稲盛和夫会長(現在は名誉顧問)から経営のやり方を巡って叱責された経験がある菊山英樹専務にインタビューした。
上場企業の「想定時給」ランキング、3位三井物産、2位三菱商事 8000円超えで「ぶっちぎり1位」になったのは?
上場企業の「想定時給」ランキング……。3位三井物産、2位三菱商事に続き「ぶっちぎり1位」になったのは?
「年商1億円企業の社長」の給料はどれくらい?
「年商1億円企業」の社長はどのくらいの給料をもらっているのか?
「この企業に勤める人と結婚したい」ランキング トヨタ自動車、任天堂をおさえての1位は?
「この企業に勤める人と結婚したいランキング調査」。1位は「地方公務員」(28.6%)だった。
富士通・時田隆仁社長に聞く「年収3500万円」の運用状況 みずほシステム障害への対応は?
富士通の時田隆仁社長に、今後の事業展開の方向性を聞いた。


