三菱地所にいながら「瞑想施設」を立ち上げた若手社員の描いた世界:働く人の日常には「余白」が必要(3/3 ページ)
三菱地所の新事業提案制度から生まれたメディテーションスタジオ「Medicha(メディーチャ)」。三菱地所という大企業の中で、同スタジオはどのように構想され立ち上がったのか。後編ではその経緯について創業者の山脇一恵さんと長嶋彩加さんに聞いた。
ビジョンと世界観を明確に描き、言葉を尽くす
とはいえ、三菱地所にとっても不動産以外の新規事業の一号案件のため、新会社の設立にノウハウがあるわけではない。そんな道なき道を切り開く二人を、上司と所属部署のメンバーはみな応援した。「本当に周りの人にも恵まれて運が良かった」と話す長嶋さんと山脇さんだが、全てがはじめて尽くしの中、周りの人に話しては協力を仰ぎ手探りで事業をかたちにしていった。
「最初に行ったのは、コラボレーションしたいアーティストや専門家を知り合いに聞いたり本で探したりして、アプローチすることです。アポが取れたらコンセプトを伝えて、多くの方に壁打ち相手になってもらいました。先の姿が見えずに夢中で駆け抜ける中で事業プランと会社をつくってきたという感じです」(山脇さん)
ただし、「お客さまに届けたい体験の世界観や、体験を通した気持ちの変遷のイメージだけは、明確に頭の中に描けていた」と長嶋さん。「こういうライフスタイルを作りたくて、そのためにこういう体験や環境が必要で、それを実現するにはどうしたらよいか」と、うまく言葉にならないながらも、目指す方向性を共有することを意識したと言う。
その結果、前編でも紹介したようにドラッカースクールのジェレミー・ハンター氏をはじめ錚々(そうそう)たるメンバーを迎え入れることになる。
メディテーション、音響、空間、ライティングとさまざまな分野のプロと出会う中で重視したのは、世界観の一致と共感度の高さ。目指している部分だけブレずに共有できることが分かったら、演出方法はそれぞれアーティストや専門家に委ねていった。
出来上がったスタジオを初めて見たときは「想像を超えた空間が広がっていて、ひとりでも多くのお客さまにこの余白のひとときを届けていきたいと強く思った」と二人は振り返る。
余白をつくり、感性を深める――。Medichaの目指す世界観は、コロナ禍の変化からますます求められるようになった。新しいライフスタイルを日本にも根付かせたいという二人が願った景色をつくる取り組みに今後も注目したい。
関連記事
- 三菱地所の30代社長がつくった「瞑想プログラム」がコロナ禍で予約殺到なワケ
三菱地所の新事業提案制度から生まれた没入体験型メディテーションスタジオ「Medicha(メディーチャ)」がコロナ禍で活況だ。コロナ禍で一時は休業を迫られていた状況から一転、なぜ売り上げを伸ばせたのか。Medicha共同代表の長嶋彩加さんと山脇一恵さんに聞いた。 - 「希望退職を募集することになったら、私はJALを辞めます」 日本航空・菊山英樹専務
コロナ禍による国際、国内の旅客数減少が長期化して日本航空(JAL)は苦しい経営が続いている。経営破綻後に当時の稲盛和夫会長(現在は名誉顧問)から経営のやり方を巡って叱責された経験がある菊山英樹専務にインタビューした。 - 上場企業の「想定時給」ランキング、3位三井物産、2位三菱商事 8000円超えで「ぶっちぎり1位」になったのは?
上場企業の「想定時給」ランキング……。3位三井物産、2位三菱商事に続き「ぶっちぎり1位」になったのは? - 「年商1億円企業の社長」の給料はどれくらい?
「年商1億円企業」の社長はどのくらいの給料をもらっているのか? - 「この企業に勤める人と結婚したい」ランキング トヨタ自動車、任天堂をおさえての1位は?
「この企業に勤める人と結婚したいランキング調査」。1位は「地方公務員」(28.6%)だった。 - 富士通・時田隆仁社長に聞く「年収3500万円」の運用状況 みずほシステム障害への対応は?
富士通の時田隆仁社長に、今後の事業展開の方向性を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.