「対面重視」の美容業界に訪れた“DXの波” コーセーの「触れない接客」に高評価が付く理由:ミルボンは美容室の解題に取り組む(2/4 ページ)
店頭での接客や体験を重視してきた美容業界。しかし特にコロナ禍以降、企業側にもDXの波が訪れた。ありきの美容業界で進むDXとはどういったものか。
オンラインカウンセリングを開始したことで、今までカウンターを避けていた新客や男性、海外居住の日本人客の利用もあった。また接客時間があらかじめ決まっていることで、「仕事が忙しく、野菜の買い物までデジタルで完結しているような方からも好評だ」(命尾・グループマネージャー)。
消費者だけでなく、BC側にも時間のメリットは多い。カウンセリング時間があらかじめ決まっていることで定時帰宅ができるほか、在宅でデスクワークが行えるなど、育児や介護などのライフステージに合わせた働き方が選べるようになる。店頭で接客するBCでは選べなかった働き方だ。
オンラインから店頭にノウハウを還元
オンラインならではの社内的な動きもある。「パーソナルビューティコンシェルジュ」ではチームでグループチャットを開いており「店頭には起こったことを運営側にすぐ共有する仕組みはないが、オンラインカウンセリングはBCと運営側がひとつのチームで動くため即時の情報共有をしている。休日に起こったことでも、週明けにはすぐに確認ができるなど迅速に対応できる」(命尾・グループマネージャー)
さらに、BCが32人と比較的小規模であることで、さまざまな検証の場としても一役買う。命尾グループマネージャーは「全国のBC、約2000人に一斉に新しいカウンセリング手法を伝えていくのは難しい。しかし31人ならすぐにブラッシュアップができ、形になった段階で店頭にテスト導入できる」と語る。
オンラインカウンセリングの場合、北海道から沖縄、海外まで全国のお客を接客しており特定の地域性に偏らないことも検証の場として適している。
このようにオンラインとリアルは相互に作用しており、桑名氏は「オンラインでカウンセリングをして店頭に送客することで、店頭の課題が浮き彫りになることもある。オンラインとオフラインの美容部員を別々とは考えておらず、どちらも行き来する、OMO(Online Merges with Offline)みたいな感じで捉えています」と語る。
オンラインのカウンセリング理論を店頭に落とし込むこともあるという。例えば、オンラインでの手を触れない接客方法は、新型コロナ禍でタッチアップを自粛する店頭でも役に立つ。
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