「勘違い」だらけの裁量労働制 労働時間や手当の知られざる実態は:これからの「労働時間」(2)(3/4 ページ)
裁量労働制は、業務に対する裁量性が大幅に本人に委ねられている柔軟な働き方だ。出退勤の自由だけではなく、効率よく働けば会社の所定労働時間以下の稼働でも許される制度だが、誤解も多い。この記事では、正しい裁量労働制の手続きや成約と、労働時間や手当の実態を解説する。
裁量労働制の労働時間と満足度
厚生労働省は、企業と労働者に対して実施した大規模調査の結果を2021年6月25日に公表している。それによると1日の平均実労働時間は専門型が8時間57分、企画型が9時間15分(労働者調査)。専門・企画型合計の平均が9時間となっている。
1週間で見ると、法定労働時間の40時間未満の労働者は18.6%、40時間以上が81.4%と大多数だ。
裁量労働制が適用されていない一般労働者との比較も行っているが、40時間以上の非適用労働者は74.8%。60時間以上、つまり1カ月の時間外労働が80時間以上の人は裁量労働制適用者で8.4%、非適用労働者で4.6%となっている。
効率よく働けば労働時間も短くできる裁量労働といっても、実際は普通の労働者よりも労働時間が長くなる傾向がある。ちょっと驚いたのは、労使で決めた1日のみなし労働時間について「分かる」と答えた労働者は59.4%だったが「分からない」が38.1%もいたことだ。労働時間に無頓着な人が少なくないのが気になる。
裁量労働制の満足度については、「満足している」が41.3%、「やや満足している」が38.7%と満足度が高い(専門型)。満足している理由で最も多かったのは「時間にとらわれず柔軟に働くことで、ワークライフバランスが確保できる」。続いて「仕事の裁量が与えられることで、メリハリのある仕事ができる」「効率的に働くことで、労働時間を減らせる」という順だった。
一方「やや不満」「不満」の合計は19.4%。不満で最も多かったのは「賃金などの処遇が悪い」。続いて「業務量が過大である」「労働時間が長い」の順だった。
ワークライフバランスなど柔軟に働けることや効率的に働くことができるので満足している人が多いが、一方で処遇や労働時間の長さに不満を抱えている人も一定数存在する。こうした問題は企業の制度や上司との関係など職場環境による違いの影響も大きいだろう。
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