ワイヤレススピーカーでアップルに圧勝、知られざる「ソノス」の実力:本田雅一の時事想々(3/7 ページ)
日本では無名な米オーディオメーカーの「ソノス」。ユニークなワイヤレススピーカーで急成長し、IT業界の巨人も一目置く存在になった企業だ。なぜ、ソノスは急成長したのか。商品の持つ強みとは。現地で新商品を取材したITジャーナリストの本田雅一氏が解説する。
「演出意図が届く」製品を、手頃な価格で
ソノスにはハイエンドのオーディオメーカーで、数100万円、あるいは1000万円を超えるような価格の製品を開発してきた技術者も数多くいるという。しかし、ソノスが販売しているのは数万円から、せいぜい10数万円の製品だ。
しかし、実はここが重要なところだ。
ソノスでは、音楽作品、映像作品の両方で音作りをしてきたマーティン氏のような人材が、実際の音楽や映像作品を通じて「このように再現されるべきだ」と経験した価値観を、エンジニアたちと共有しながら製品作りをしているのだ。
筆者自身、オーディオ製品の開発に関わったり、あるいは音楽プロデューサーや録音エンジニアと一緒に音のチューニングを行ったことがある。どんなに高スペックな製品も、きちんと音を聴き込んでチューンしなければ、質の面で良いものにはならない。
筆者がマーティン氏に、「ソノスの製品は価格なりに品位や再生帯域などの違いはあるけれど、表現しようとしている音に一貫性がある。実際に映画や音楽を楽しんでみると、どのグレードの製品でも得手・不得手が少なく同じような質感で音を楽しめる」と話したところ、出てきたのが、この製品作りに対するスタンスだった。
サラウンド音声の映画作品などでは、セリフはセンターチャンネルに割り当てられ、より明瞭に聞こえるようエンジニアが特定の周波数を中心に持ち上げるなどの処理が行われる。
これは一例でしかないが、オーディオ製品は「音を演出する」のではなく、「演出された音声を演出意図通りに伝える」ことが重要ということだ。より心地よく音を楽しんでもらうために、ミキシングやマスタリングなどのエンジニアは音の質を合わせ込んでいく。
そうした制作側の意図をどう伝えるか。その価値観をマーティン氏や、その背後にいる多くのエンジニアが共有しているからこそ、価格なりの品位の違いやサイズや用途による違いこそあれ、一貫性のある音楽体験がもたらされるのだろう。
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