コラム
悩みがあった東武鉄道にとって、東京スカイツリーはどんな存在になったのか:開業10周年(2/4 ページ)
開業10周年を迎えた東京スカイツリー。「とうきょうスカイツリー駅」や商業施設を含む「東京スカイツリータウン」を運営する東武鉄道から見た戦略的意義とは。
東武はスカイツリーをビジネスととらえた
東武鉄道は電波塔と複合施設のために子会社をつくり、そこが事業主体となった。最初は「新東京タワー」を名乗り、08年6月に「東武タワースカイツリー」へと名称変更した。
最初は「持ち込まれた」印象の強い案件だったが、東武鉄道がこの「スカイツリー」案件に真剣になったのはなぜか。同社の土地を使用したからではなく、新しい「まちづくり」に活用できるからだ。
というのも、東武鉄道の始発駅・浅草周辺は、繁華街として既に確立している土地であり、大規模開発が難しい状態になっていた。下町の雰囲気を愛する人も多く、その地を“東武色”に染めることを嫌がる状況もあった。なにせ浅草は、江戸時代から栄えていた地域である。東急グループあってこその渋谷とはかなり違うのだ。
一方で、隅田川を渡ったエリアは存在感が薄くなっていた。東京の中心が大手町・丸の内エリアから赤坂、六本木、新宿エリアに移り、以前の都心よりさらに東側にある墨田区エリアの活性化が求められていた。
東武鉄道は東京スカイツリーの建設によって、東京の東側エリアにたくさんの人を呼び、住んでいる人が愛着を持てるようなエリアにできると考えたのだろう。そして、その人たちが東京スカイツリーに登って東京の風景を楽しんだり、商業施設を利用したりして、東京下町エリアへの愛情が増すようにと、目論んだのではないか。
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