悩みがあった東武鉄道にとって、東京スカイツリーはどんな存在になったのか:開業10周年(3/4 ページ)
開業10周年を迎えた東京スカイツリー。「とうきょうスカイツリー駅」や商業施設を含む「東京スカイツリータウン」を運営する東武鉄道から見た戦略的意義とは。
貨物駅跡地を活用した地域づくり
東京の都市部で大規模開発の対象エリアとなるのは、鉄道施設の跡地となるケースが多い。広い場所が確保できるからだ。多くの人が注目した高輪ゲートウェイ駅周辺は、車両基地があった。新宿のタカシマヤタイムズスクエアなど、貨物駅跡地を利用した例もある。東京スカイツリーも、貨物駅跡地につくられた。
東京スカイツリーは、電波塔という実用的なものである一方、展望台などを備えた観光施設でもある。商業施設としては「東京ソラマチ」がある。同施設には「すみだ水族館」や「郵政博物館」「コニカミノルタ プラネタリウム天空」といった文化施設もある。加えて、「東京スカイツリー イーストタワー」というオフィスビルも建築された。
あわせて、「東京スカイツリータウン」となっている。東京という都市の中心部が、西へ西へと向かっていく中、どうしても東武鉄道は不利な状況となっていた。この状況を変えたのが、東京スカイツリーである
世界都市・東京という都市の繁栄を、東側に一気に持っていくことが、東京スカイツリー最大の貢献であったと考えてもいい。渋谷や新宿などで行われていた都市開発が下町でも行われ、その下町の地位が向上したのは、東京スカイツリーの存在価値といっても過言ではない。
ものづくりに秀でていたり、人情があったりといった下町の価値が再発見され、そこに多くの人が押し寄せるようになったことが、東武鉄道にとってどれほど大きかったことか。
コロナ禍前は、多くの観光客が東京スカイツリーに押し寄せ、近くの浅草などとともに外国人観光客に人気のスポットとなっていた。高さ350メートルの場所にある「東京スカイツリー天望デッキ」は21年12月27日に来場者数が4000万人に達した。その後、コロナ禍により来場者数は減っているものの、コロナ禍が終息し日本と世界の行き来が再びできるようになったら、東京スカイツリーは世界都市・東京を一望できる施設としてまた人を集めることになるだろう。
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