オンキヨー破産の反響に“大きな誤解” オーディオは「ノスタルジックなビジネスではない」と言えるワケ:本田雅一の時事想々(2/4 ページ)
オンキヨーが、5月13日に自己破産を発表した。この件に関連して、オンキヨーをかつてのオーディオブームに乗じ、今は勢いを失った日本ブランドの代表として“ノスタルジックな論調”で語る言論が多かった。しかし、筆者はオンキヨーは「伝統的なハイエンドブランド」という立ち位置ではなく、またオーディオビジネスの本質をつかんだブランドは今も求められていると指摘する。オーディオ業界で、何が起きているのか。
オーディオの本質は“大好きな音楽を心地よく楽しむ”こと
一方で、“伝統的なハイエンドオーディオ”メーカーは、確かに市場が小さくなる中で縮小均衡にはあるものの、コロナ禍での在宅需要に加えてオーディオショーなどの中止が相次ぎ、さらに商談もオンラインが増えたことで経費が削減され、むしろ利益が出ているメーカーの方が多い。
このように書いていると、「では日常が戻れば元通り、さらには世代交代が進むにつれて市場そのものが失われる」という意見が出てくるだろう。全くその通りではあるが、では高品質なオーディオが求められないかといえば、そんなことはない。
そもそも、音楽を聴くだけならばもっと安価な方法がたくさんあるにもかかわらず、数百万円はおろか数千万円クラスのオーディオ製品まで存在するのはななぜなのか。それはオーディオ製品が機能ではなく、感性に訴える“質”の部分に訴える製品だからだ。
先日、米ニューヨークに出張した際、現地で“1パック8粒で50ドルのイチゴ”が話題になってた。その背景はともかく、そんな高級イチゴが商品として成立するのは、“おいしさ”という個人の欲望や感性に訴える部分で違いを出せば、そこに価格の上限はないことを示している。
もう少し身近なところで言えば、単純な計算を行う場合、電卓は100円ショップでも購入できる。そして、電卓は100円で買いながら、100円よりも高価な水を購入する人もいる。日本ならば、蛇口をひねれば飲める水が出てくるというのに。計算の“機能”はなるべく安価に入手できる方がいいが、“おいしい水”が飲みたいと思えば、そこに別の価値が生まれるということだ。
ではオーディオの本質は何なのかと言えば、大好きな音楽を心地よく楽しむために他ならない。もっと心地よく聴ける環境が自宅に欲しい。そんな欲望を満たすために、音質追求のためオーディオ専用電源(変圧トランス)を求めて自宅にマイ電柱を立てる人だっている。
あるテレビ番組で“マイ電柱オーナー”として登場した江崎友淑氏は、かつては奏者として、現在はプロデューサーとして、レーベル主宰者としてクラシックの名盤を生み出し続けている「ホンモノの音を知ってる人」であることを付け加えておきたい。
江崎氏は、ピアニスト金子三勇士氏のアルバム制作に際して、一緒に仕事をしたことがあり、“本物(リアル)”を追求する姿勢をよく知っている。オーディオ製品の価値は本物を追求する熱量に比例する。
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