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スパコン富岳が世界1位から転落 「2位じゃダメなんでしょうか?」を、もう一度考える本田雅一の時事想々(3/4 ページ)

理化学研究所と富士通が共同開発したスーパーコンピュータ(スパコン)「富岳(ふがく)」が、計算速度の世界ランキング「TOP500」で世界2位に転落した。このニュースに伴い、富岳の開発背景を振り返りながら、2009年にスパコンの予算を巡る国会の事業仕分けで発された「2位じゃダメなんでしょうか?」という問いについて考える。

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なぜ、スパコンに予算を投入するのか

 富岳の開発ストーリーは広く知られているものであり、コンピュータ、科学技術に興味のある読者なら聞いたことがあるだろう。

 それら富岳の開発ストーリーと、スパコンがどのように使われているかを照らし合わせれば、結果としての“演算性能世界一”ではなく、継続的にスパコンに投資を行っていく意味や“2位でもスゴイ富岳”の意義が分かるはずだ。

 スパコンはさまざまなジャンルに応用されている。大きく分ければシミュレーション、深層学習、ビッグデータ解析の3つのジャンルになるが、中でもシミュレーションを高精度かつ大規模に行う役割は大きい。


高精度かつ大規模なシミュレーションを実現する(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 シミュレーションとは、現実社会における自然科学の挙動、反応を演算式に当てはめることで、異なる条件下でどのような結果となるかを予測することだ。

 「現実社会では想定外のことも起こり得るのでは?」と思う読者も多いだろう。

 その通り、シミュレーションは研究が進むにつれどんどん複雑になる。自然科学のさまざまな現象を演算モデル化していくことで、シミュレーションのアプリケーションが構築されていくが、より高い精度、より規模の大きなシミュレーションになるほど求められる演算能力は増えていく。

 シミュレーションにもさまざまな粒度があり、気候変動など地球全体の問題から、都市構造の変化による人の動きの変化、内燃機関の燃焼、空調設備の最適化などもあるが、実際の産業への応用計算は市販のスパコンで行われている。

 富岳は文科省が進めるNLS(National Leadership Supercomputer)として開発されたもので、富岳の次もNLSとして開発が行われ、最先端の科学技術研究を前に進めるために使われている。

 一般に目にするのは“マスク使用時・未使用時の飛沫によるエアロゾル”のシミュレーションだろう。このように、富岳の応用は“社会全体の質を高めること”に使われている。

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