スパコン富岳が世界1位から転落 「2位じゃダメなんでしょうか?」を、もう一度考える:本田雅一の時事想々(4/4 ページ)
理化学研究所と富士通が共同開発したスーパーコンピュータ(スパコン)「富岳(ふがく)」が、計算速度の世界ランキング「TOP500」で世界2位に転落した。このニュースに伴い、富岳の開発背景を振り返りながら、2009年にスパコンの予算を巡る国会の事業仕分けで発された「2位じゃダメなんでしょうか?」という問いについて考える。
エネルギー開発、気候変動予測と対策、より効率的な社会の実現、主要産業における生産効率向上、創薬や検診結果の自動分析といった医療、ヘルスケアの領域、災害予測や防災対策、新素材開発など、国全体で社会の質や国際競争力を高めるジャンルで使われる。
スパコンの開発、導入が盛んな国としては米国や中国があり、首位を明け渡したフロンティア以外にも次々に富岳を越えるスパコンが運用開始される見込みだ。また中国では非公開で運用開始されているスパコンもあり、少なくとも2つは富岳の性能を越えるとされている。
巨額予算を投入する文科省NLSへの批判の意見も目にするが、技術は積み重ねである。次の技術へと進むための礎がなければ、新しい技術も生まれない。京がなければ、富岳もなかった。
そして世界トップクラスのスパコンがあることで、スパコンを使った研究開発、つまりアプリケーション開発も前進させる。そして開発されたアプリケーションは、いずれ一般化し、より幅広く使われるスパコン(ハイパフォーマンスコンピュータ:HPC)を用いて産業や社会を強化する礎となっていく。
スポーツにおいて、高度な技と高い身体能力を備えているからこそ、さらなる高みへと挑戦できる領域があるように、スパコンの応用も継続こそが力となり得るのだ。
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