「部下に退職代行を使われた」 無理やり本人を出勤させることはできるのか?:退職代行会社とのやり取りはどうする?(2/3 ページ)
退職の申し出をする際に退職代行サービスを利用する人が増えてきたという意見を耳にする。退職代行会社から連絡が来ても本人を出勤させることはできる? 引き継ぎはどうすべき? などの疑問を社労士が解説。
知っておくと役に立つ! 退職代行サービスとのやり取り
初めて退職代行会社から連絡がくると、どの会社も驚き混乱します。そんなときに、慌てないように基本的なルールを確認しておきましょう。
Q: 通知文に“本人への連絡禁止”と書いてありますが、本人に連絡しても良いですか?
A: 本人に連絡しても問題ありません。
退職代行会社は通知文で本人への連絡を禁止してくるのが一般的です。しかし、もともと退職に関する話が出ていれば別ですが、事例1や3のように何の前触れもない場合、本当に本人の意思か? という疑念が湧くでしょう。また言われるがまま退職処理を進めた後に、本人から「辞めるなんて言ってない!」と抗議されるリスクも排除できません。
そこで会社としては、本人に意思確認をする必要がありますが、退職代行会社が求める“本人への連絡禁止”が気になります。ただ、この連絡禁止は、あくまでもお願いでしかありません。会社から本人へ連絡して意思確認をすることは何ら問題ありません。
もっとも会社から電話をしても一切出ない、コールバックがない、メールの返信がないということであれば、本人の退職意思は推測できます。また、メンタル不調になっている可能性もあります。その時は、退職代行会社へ本人の署名のある退職届の提出を依頼しましょう。
Q: 就業規則で退職は申し出から30日後と定めているので2週間後の退職は断れますか?
A: 残念ながら断れません。
これは退職代行サービスに限ったことでなく、就業規則の効果の話になります。労働法の中で、労働者からの退職の申し出の期限に関する定めはなく、会社ごとに就業規則で定めることになっています。よって、それぞれの会社の事情に応じて、“退職の申し出は30日前に行うこと”などと定められています。
一方で、民法では労働者(契約社員などを除く)からの退職の申し出について以下の定めがあります。
このような背景から就業規則と民法という2つの基準が存在するのですが、現在の主流はそれぞれに違いがある場合は民法が優先されるという考えです。よって、就業規則で30日後の退職と定めていても、労働者が民法を根拠に2週間後の退職を申し出てきたときは、原則として応じざるを得ません。
Q: 「今日から行かない」と言われているが、出勤を命じてもいいですか?
A: 出勤を命じることは可能です。
労働者からの退職の申し出は2週間後に成立しますが、逆に言うとそれまでの間は労働契約が存続しています。よって、労働者には出社する義務があり、会社には出社を命じる権利があります。
また、年次有給休暇を使用する旨の申し出があっても、退職日が確定していない状態であれば、予定されたアポイントの対応や業務の引き継ぎなどのために年次有給休暇の日を変更することができると労働基準法に定められています。
また事例3のように、体調不良を理由に欠勤を申し出てくるケースもあります。社会保険労務士が作成した就業規則であれば、このあたりも想定して診断書の提出を義務付けていると思いますので、その提出を求めましょう。もちろん、欠勤であればその日数分の賃金控除が可能です。
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