問題行動の多い社員のシフトを無断でカット 賃金補償の義務は生じる?:判例に学ぶ「シフト制」(3/5 ページ)
シフト制の揉め事の一つであるシフトカット、労働契約書に「出勤日は会社が作成するシフトによる」と定めていれば、理屈上シフトカットは可能。しかし、状況によっては会社に賃金補償の義務が生じるケースもあるという。社会保険労務士が判例を基に解説する。
シフト制の定義とは?
一般的に使われる「シフト制」という言葉は労働法の用語ではなく、慣習的に使用されているものです。シフト制とは始業時刻や終業時刻、出勤する曜日などが固定されず変動する働き方のことを指し、下のようなシフト表を作成することから、シフト制と呼ばれています。
そしてシフト制と呼ばれるものには、次の2つのタイプが存在します。
以下、それぞれのタイプについて解説していきます。
変形労働時間制タイプのシフト制
1つ目は変形労働時間制による働き方を示す意味でのシフト制です。変形労働時間制は、1カ月の以内の一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲において特定の日または週に法定労働時間を超えての労働を可能とする勤務形態を指します。24時間営業のファミリーレストランや年中無休で稼働する医療・介護の業種などで採用されることが多いです。就業規則に始業終業時刻などの具体的なパターン、各パターンの組み合せの考え方、シフト表の作成手続き及びその周知方法などを定めておき、それに従ってシフト表で労働時間などを定義します。
一般的な労働契約書には、「始業午前9時00分、終業午後6時00分、土・日曜日が休み」などの記載がありますが、24時間体制の店舗や医療現場などでは従業員が一斉に休みを取るのが難しいことに加え、繁閑の差も激しいため、雇い入れ段階で始業・終業時刻などを固定することができません。不規則なスケジュールにも対応できるよう変形労働時間制タイプのシフト制が導入されています。
労働時間未確定タイプのシフト制
2つ目のタイプは、サービス業などで働く主婦や学生などのパートタイム労働者となじみのある労働時間未確定タイプのシフト制です。前者との大きな違いは、雇い入れの段階で1カ月にどのくらい働くことかを決めず、労働契約書に「1日4時間以内としシフト表で定める」などのあいまいな記載をしている点です。
あらかじめ労働時間を決めないことが、会社と労働者双方にとってのメリットとなるので、このような運用がなされています。
これも、シフト表によって個人ごとに出勤日や始業・終業時刻を定めますから、シフト制と呼ばれます。なお、1カ月にどのくらい働くことになるかの取り決めがないので、会社が作成するシフト表で労働時間が増減し、これにより賃金も変動します。
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