問題行動の多い社員のシフトを無断でカット 賃金補償の義務は生じる?:判例に学ぶ「シフト制」(4/5 ページ)
シフト制の揉め事の一つであるシフトカット、労働契約書に「出勤日は会社が作成するシフトによる」と定めていれば、理屈上シフトカットは可能。しかし、状況によっては会社に賃金補償の義務が生じるケースもあるという。社会保険労務士が判例を基に解説する。
シフト制の運用ルールと年次有給休暇
今回は、トラブルの多い2つ目の「労働時間未確定タイプのシフト制」に絞って解説します。シフト制については、労使ともに自由度が大きすぎるがゆえにちょっとしたボタンの掛け違いが起こりやすいという難点があります。
こういった状況を踏まえて、厚生労働省は以下のようなルールを定めることを推奨しています。
シフト制を上手く運用するためには、このような取り組みを通じて、お互いに不満を抱かないように工夫していくことが大切です。
また、これ以外にシフト制の労働者を雇用する上で確認が必要なものが、年次有給休暇です。よくパートタイム労働者には年次有給休暇はないと勘違いされることがありますが、シフト制で週1日しか働かないような労働者にも年次有給休暇の権利が発生します。ただし、フルタイムで働く労働者と同じ付与日数ではバランスを欠くため、パートタイマーの年次有給休暇は、過去の勤務日数を1年間の所定労働日数に当てはめて付与日数を算出します。
一方で、この運用は会社にとって若干のデメリットがあります。年次有給休暇は「〜出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、……有給休暇を与えることを要しない」(労働基準法第39条)と定められているため、出勤率が8割未満の休みがちな労働者への年次有給休暇の付与は不要ですが、通達による運用の場合、出勤の実績=所定労働日数のため、出勤率が10割となり、全ての労働者に必ず年次有給休暇を付与することになります。よって、1週間当たりの所定労働日数を確定できるのであれば、労働契約書に所定労働日数を明記しておく方が良いでしょう。
また年次有給休暇の使用ですが、会社としてはシフト表で労働日と定めた日は当然働いてもらわないとシフト表を作成した意味がなくなるのですが、一方で労働者は労働日の勤務を年次有給休暇で免除してもらうので、シフト表で労働日とした日にしか使用できません。よって実務的には、有休の希望があった日をシフト表で労働日と定めて、年次有給休暇の申請をしてもらうという少し変わった運用をするケースが多いようです。
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