上司に大激怒される「悪い残業」と評価される「良い残業」 その違いとは?:プロが解説(2/4 ページ)
「残業しただけなのに怒られるなんて思ってもみなかったです」――納得がいかないと愚痴をこぼすのは、とある出版社で営業をしている佐藤さん(仮名、30歳男性)です。
働き方改革と残業
働き方改革により、残業時間に上限が設けられたことはご存じでしょうか? 法定外残業を命じるには、事業場ごとに36協定を締結し届け出をする必要があります。そして、その協定の範囲内で残業を命じることができるのですが、働き方改革以前は、その範囲内について強制力のある上限が設けられていない状態でした。
そこで、働き方改革により、2019年(中小企業は20年)に上限時間を罰則付きで規定したのです。具体的には、年720時間、単月で100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)となりました。この上限時間は法律で定められています。つまり、これに違反すると法律違反となり罰則を受ける可能性があるということです。「罰則があるから」といった単純な理由だけではありませんが、企業がより労働時間を意識するようになったのは間違いありません。
佐藤さんがどやされたワケ
佐藤さんが上司からどやされたのには訳があります。それは、社内のルールを無視して残業をしていたからです。佐藤さんはタイムカードを切った後、上司にも一切報告せずに残業をしていたそうです。実際には午後9時まで残業していたにもかかわらず、タイムカードは午後6時で打刻していたのです。
これにキレたのは人事部です。経営層からの指示でサービス残業撲滅に取り組んでいたにもかかわらず、社員側から裏切られた格好となってしまったからです。「あなたの身勝手な行動で会社が法律違反を犯すことになってしまう、責任とれるのか」と。佐藤さんとしては「残業代ももらう気ないんだから好きにさせてほしい」「会社のためにやってるのになぜ文句を言われるんだ」と返したそうです。
これは明らかに正しくない残業、いうなれば悪い残業の典型例といえるでしょう。会社は法律を守るためのルールを作る。そして、社員はそのルールに従って残業をすることが残業の大前提です。ちなみにですが、会社が残業のルールをしっかりとつくり、社員にも徹底して周知していた中で、上司に見つからないように勝手に残業していた場合は、結果として残業とは認められないことがあるので注意しましょう。その場合は、後になって「残業の不払い」を訴えても通用しないのです。
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