黒字でも希望退職を募る企業のホンネ──5年後に迫る「深刻な問題」とは:改正高齢法の実情(3/4 ページ)
コロナ禍で希望退職者を募る企業が相次いだ。黒字でも希望退職を募る企業が少なくないのは、なぜなのか? 5年後に迫る「深刻な問題」とは──。
「キャリアに対する意識が芽生える」 大手電機メーカーの事例
ある大手電機メーカーでは、本人が能動的に動くための教育・研修の機会などを提供している。50歳以降のシニア社員のキャリア形成をサポートするプログラムだ。
プログラムは、新たなスキル修得を含む経験や知見の広がりを支援する制度と、それらを下支えする意識改革などの研修の大きく2つで構成している。下支えの部分が、50歳以降のキャリアを自ら考えるワークショップ型研修とメンタリングだ。キャリア研修は50〜52歳と57歳時点の2回実施している。50歳時の研修受講者は1000人程度。
最大の特徴は研修後に一人一人にメンターが張り付き、定期的にキャリア面談を行っている点だ。メンターは約30人。本業との兼任だが同じ部署の社員が付くことはなく、相談内容については人事部が一切関知することもない。
その上で将来のキャリアを考え、新たな経験や知見を獲得する制度として「兼務案件公募」と、新たなスキル取得を金銭的に支援する制度を設けている。
兼務案件公募は、応募して採用されると、現部署の仕事を継続しつつ、自分の労働時間の10〜20%程度を他の部署のプロジェクトなどの業務に携わるものだ。同社は「違う仕事を経験することで自分の市場価値に気付き、キャリアに対する意識も芽生え、新しいチャレンジをしてみようという動機付けにもなる」(人事担当者)ことを期待している。
スキル取得支援制度は、50歳以上に限定し、将来のキャリアを見据えて保有スキルの向上や新たなスキルの獲得のための学びに自己投資をした場合、1回10万円まで補助する制度だ。今の仕事に関連するスキルだけではなく、新しいスキルも対象とし、将来の目指したいキャリアを広く捉えて学ぶことを推奨する。例えば中国語会話を勉強し、自分が携わるビジネスの範囲を国内から海外に拡大したいという社員もいれば、より深いPCスキルを修得するために利用している人もいる。
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