止まらない「ヤクルト」旋風、実は「海外売上」の方が好調?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
ヤクルト本社の株価は8550円まで上昇し、7月12日の高値をさらに更新した。足元では、同社の株価が日経平均株価を40%以上アウトパフォームする好調ぶりなのである。なぜ今、ヤクルトに注目が集まっているのだろうか。
短期でブームを連発
少し前、SNSやクチコミで「安眠効果がある」などとして「Y1000」が大きな話題を呼んだ。都内のスーパーマーケットに足を運べば品切れであったり、購入にあたって個数制限がかけられていた。
5月31日にはヤクルト側が公式サイトでお詫び文を掲載するほどになっていた。
これを受けた増産体制の強化もあって、今ではヤクルトを取り扱うスーパーの乳酸菌飲料コーナーの品薄騒ぎも、落ち着きを取り戻してきたようだ。
それでも、ヤクルトの宅配サービス「ヤクルト届けてネット」では新規申込が休止されている。申し込みが完了している顧客も、ヤクルト1000は追加発注できないという状況だ。
「ヤク1000」という愛称でSNSを中心に広がりをみせてきたのは、同社の取り扱う「Y1000」である。そのルーツは、ヤクルトレディ経由でしか買えなかった「Yakult1000」にある。ストレスの緩和や睡眠の質を向上させるという効果が、オフィスワーカーを中心に2021年10月頃から口コミで広がりをみせていた。
Yakult1000の店頭販売版にあたる「Y1000」は、販売が開始された21年10月から短期間のうちに小さなブームを連発しており、21年12月にも品薄状態になるほどの人気ぶりをみせていた。対象がビジネスパーソンから徐々に一般層へ移りかわっていくという、口コミベースの広がりが短期で連発するブームの要因であると考えられる。
ちなみに、これは過去の海外事例となるが、18年にはNetflixで独占配信されていた映画の登場人物がヤクルトをあおるシーンが大きな話題を呼び、海外で大きなヤクルト需要が発生したこともある。
ヤクルトはブームに愛されやすいという性質があるようだ。
関連記事
- 東電元役員「13兆円」賠償判決、実効性はほとんどなし?
福島第一原子力発電所の事故を引き起こした、東京電力の旧経営陣に対する賠償金額は空前絶後の数値となった。なぜ東電の旧経営陣は個人として総額13兆円以上の賠償責任を負うことになったのかを確認していきたい。 - リーマン前も現れた「二極化相場」が今年も発生? グロース株に忍び寄る利上げの“影”
コロナ禍が招いた「二極化」は業界だけではない。金融緩和の結果「グロース株」が選好され、「バリュー株」は割安段階で放置されるという相場の二極化も招いた。このような動きはリーマンショックの前夜にも現れていた。グロース株の不振がこの先の経済的なショックを示唆する可能性もある。 - 原油価格が史上最速ペースの値上がり 「第三次オイルショック勃発」の可能性も
原油価格が歴史上類を見ないスピードで値上がりしている。2020年にはマイナス価格になったこともあるNY原油先物が、22年の初めには75〜80ドル近辺まで値上がりした。そして3月に入ると、年初からさらに4割も暴騰し、一時は1バレル=112ドルを突破したのだ。 - 山手線の内側2つ分の土地が放出予定? 「2022年問題」は本当に“不動産ショック”をもたらすのか
コロナ禍による金融緩和やリモートワークの普及といった追い風もあって、2021年の国内不動産市況は、マンションや住宅を中心に活発となっている。昨年までは住宅用が好調をけん引してきた不動産市況だが、今年はいわゆる「2022年問題」のファーストイヤーであり、一部では不動産価格の大幅な下落がもたらされると心配する声もある。 - 令和4年は給与の半分以上が税と社会保障に消える? 財務省「潜在的な国民負担率は56.9%へ」
財務省のWebページを見ると、「令和4年度の国民負担率は、46.5%となる見通しです」と記されている。さらに、「国民負担に財政赤字を加えた潜在的な国民負担率は、56.9%となる見通しです」と記載されている。令和は江戸時代よりも重い「六公四民」に近い状態となりつつあるようだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.