日本IBMが、欲しい人材を採れる秘訣 独自の採用チームの実態に迫る:ダイレクトリクルーティング事例(3/4 ページ)
日本IBMは、人材獲得にどのように取り組んでいるのか。“積極的な採用”を可能にするチーム作りと、ダイレクトリクルーティングの手法に迫った。
ブランディングから入社までの流れ
実際に採用の現場では、どのように活動しているのか。ブランディングから入社に至るまでの業務フローとそれを実行する役割分担の詳細については、下図2を参照いただくとして、採用に至るまでの流れについて聞いた。さまざまなケースが存在するため、あくまでも1例に過ぎないと前置きした上で、次のようなプロセスで採用に至ることがあるという。
「転職を検討している人が登録しているSNSを経由して当社のリクルーターから声がけする場合があります。先方は、転職を希望しているわけですから、この場合リードタイムは短くなる傾向にあります。その上で、30分から1時間のミーティングの場を設け、当社や採用ポジションの説明、候補者におけるキャリアプラン上のメリットといったお話をさせてもらいます。その後、ビジネス部門を交えた面談に進み採用に至ります」(中垣氏)
その一方で、アプローチした候補者が転職を考えていない場合はどうなるのか。
「そのような候補者については、当社に転職することで得られるメリットに気づいてもらうところからお話するようにしています。通常、1回の会話で応募に同意してくれることはありません。2回、3回とタイミングを見ながらお話させていただきます。当然、時間はかかりますが、転職のメリットに対する理解を深めてもらうためには必要なことです」(中垣氏)
ただ、選考の結果として、応募してくれた候補者を日本IBM側から断る場合もあるのではないか。
「お声がけした候補者とこちらが求めるポジションとのマッチングにおいて、タイミングが合わないこともあります。その場合は引き続きタレントプールにキープしておくといったことを候補者にお伝えして理解していただきます」(中垣氏)
リクルーターの役割とは
採用活動を現場で進める担当者の各役割について触れておこう。候補者を見つけ、内定に至るまでの全てのプロセスにおいて、業務設計、候補者の母集団形成、選考プロセス、内定受託までをフォローする「Talent Acquisition Partner」という役割が存在する。一般的にいう「リクルーター」という位置付けだ。
他には、主にダイレクトリクルーティングのチャネルに特化しリクルーターを補佐したり候補者の母集団を形成する「Talent Acquisition Sourcer」、日本IBMの採用活動の認知度向上に特化して活動する「Branding」、リクルーターの管理業務を補佐する「Talent Acquisition Coordinator」、入社が決定した人材の研修などを補佐する「Onboarding」で構成される。
各チャンネル共通にいえることだが、採用するポジションが求める能力やスキルに合致した候補者を見つけ内定までフォローするリクルーターの力量がそのまま採用活動の質に直結する。ひいては、企業の収益力に影響することになる。
「リクルーターの育成にもコストと時間がかかります。そのため、組織として役割分担しノウハウを組織全体で共有し継承する仕組みを構築しています。また、リクルーターとしての評価は、各種の採用数に加え、指標には現れない各種のバックオフィス的な業務、チーム全体への貢献などもも評価の対象になります」(佐々木氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
優秀な人を欲しがる現場、見つけられずに悩む人事──「中途採用の壁」を壊すため、何をしたのか
DX人材の採用に注力し始めても、部門の要求が高く、マッチする人材がそもそも見つからなかった東洋エンジニアリング。開始から「半年間、成果なし」だった市場価値の高い人材の採用を、どのようにして軌道に乗せたのか。取り組みを聞いた。
「求人に応募がない」なら、人事自ら採りにいく 採用競争時代のダイレクトリクルーティング入門
近年注目度が上がっている攻めの採用手法「ダイレクトリクルーティング」。メリット・デメリットのほか、どんな企業において効果的なのか解説します。
“採用競争”に勝つカギは「現場」にあり 採用担当が現場に理解してもらうべき4つのこと
ダイレクトリクルーティングにおいて、転職希望者と入社意向を高めるコミュニケーションを取り、自社そして採用予定部署の魅力を伝えられるのは他でもない「現場」の従業員です。採用担当者は、現場に4つのことを理解してもらわなければなりません。
「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。
「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。


