高級食パンブームを起こすつもりはなかった 乃が美のパンを日常食にするために「変えること」と「変えないこと」:過当競争後の生き残り方(4/4 ページ)
高級食パンブームをけん引してきた乃が美。情報発信やフレンチレストランのシェフとコラボ、社内のアイデアを募るなど新たな取り組みに力を入れている。高級食パンブームに陰りが見える中、何を変え、何を変えないのかを取締役に聞いた。
乃が美の食パンを日常食に
新たな取り組みを進めている一方で、乃が美が「変えてはいけない」と考えていることは、先に触れた創業の志以外にもある。それはプロダクトを大事にして、商品の良さをシンプルに伝えることだ。
『黒山乃が美』のポスターを見ると、白地のバックに食パンの写真が大きく配置されている。これは乃が美の変わらない姿勢だと小林氏は説明する。
「他社のポスターを見ると、写真をすごくきれいに撮られています。それはいい取り組みだと思う一方で、乃が美としてはまねをするのはやめようと話しています。きれいな食器やテーブルクロスなどと一緒に写真を撮っても、見た人が乃が美の食パンだと分かるのかといわれると、なかなか分からないですよね。
乃が美の食パンは、あくまで日常の食卓の中で、まずはそのまま食べていただきたいと思っています。そういう食パンなので、写真はシンプルにして、地味だけれども、これが乃が美の食パンだと打ち出すことを大事にしたいと思っています」
乃が美は高級食パンブームを否定しているわけではない。意図せずに起きたブームを経験しながら、創業当初からの目標に向けて前に進み続けている。その目標が「日常食になること」だと小林氏は繰り返した。
「今までいろいろな食品のブームがありました。本当にどれもおいしいものだったと思います。おいしかったけれども、なぜ残っていないのだろうと考えると、少なくとも日常食ではなかったからではないでしょうか。乃が美の食パンは、あくまで日常食になることを目指します」
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