高級食パンブームを起こすつもりはなかった 乃が美のパンを日常食にするために「変えること」と「変えないこと」:過当競争後の生き残り方(3/4 ページ)
高級食パンブームをけん引してきた乃が美。情報発信やフレンチレストランのシェフとコラボ、社内のアイデアを募るなど新たな取り組みに力を入れている。高級食パンブームに陰りが見える中、何を変え、何を変えないのかを取締役に聞いた。
社内アンケートでアイデアを募り実現
『黒山乃が美』の発表会では、3年連続でミシュランガイドの一つ星を獲得したフレンチレストラン「sio」のオーナーシェフである鳥羽周作氏と、公式アドバイザー契約を結んだことを明らかにした。鳥羽氏はその後、乃が美の公式アンバサダーに就任している。発表会で鳥羽氏は、『黒山乃が美』の魅力を次のように表現した。
「分かりやすく言えば焼き肉ではなくローストビーフ。まわりをしっかり香ばしく焼きながらも中をしっとり仕上げているのは、今までの食パンにないレストランクオリティーです」
食パンのメーカーがフレンチレストランのシェフとコラボレーションするのは珍しい取り組みでもある。このアイデアは社内から寄せられたと小林氏は明かす。
「シェフの方と何か一緒に取り組むのであれば、どのような方がいいかを社内でアンケートしました。すると、2人から鳥羽さんの名前が挙がりました。それでYouTubeを見させていただいたら、フレンチトーストを作っていて、すごくおいしそうだったので、鳥羽さんにお力添えをいただくことにしました。
鳥羽さんとは一定期間の契約をさせていただいています。鳥羽さんにお願いするのは、どのような食べ方をすれば当社のパンで上質な体験をしてもらえるのかを発信することですね。すでに食べ方のアイデアなどをたくさんいただいています」
乃が美では約40人の社員のほか、全国のフランチャイズの加盟店の声を聞くことを重視している。これもブームに陰りが見えた中で、変わるために始めたことだ。
「ブームがいずれ下火になることはわれわれも分かっていたことで、覚悟していました。でも従業員から見ると、売り上げが下がることによって、不安な気持ちや危機感が出てきます。それはフランチャイズのオーナーさんも同じです。
そこで考えたのは、みなさんの意見や、みなさんがどう思ってるのかをしっかり聞いていくことです。その中で出てきた面白いアイデアや、乃が美の食パンが食文化になっていくためにできることを、一つ一つ実現していきたいと思っています」
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