「地獄に墜ちてほしい」騒動で浮き彫りに? 音楽サブスクで得するミュージシャン、損するミュージシャン:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(4/4 ページ)
シンガーソングライターの川本真琴氏が26日、自身のSNSで音楽のサブスクリプションビジネスについてのぼやきととられる場面があった。ただし、この点についてはミュージシャンの間でも見解が分かれるようだ。
顧客基盤が厚ければサブスクに迎合しなくてもよい?
先のCD・レコード時代で栄華を誇ったミュージシャンからすれば、本来ファン1人あたり最低でも1000円以上支払って聞いていた曲を1再生0.数円で提供したり、あまつさえ無料で提供したりすることに大きな抵抗があるかもしれない。そして、その価値観は間違っているとは言い切れない。
ルイヴィトンやエルメスのような高級ブランドは「お値引き祭」や「お客さま還元セール」といった「安さを売りにする」イベントを行わない。それは、ブランドを支持する盤石な顧客層があり、価格の高さ自体がブランドの力を象徴するという側面もあるからだ。
これを今のミュージシャン業界にあてはめると、彼らは「バズっているミュージシャン」が持っていない「往年のファン」というロイヤルカスタマー層が大半を占める。今のミュージシャンは、逆にいえば、往年のファンを獲得するためにサブスクや無料での音楽公開といった手法をとっている側面もあるため、現状、安定顧客に恵まれているミュージシャンはわざわざ”地獄に堕ちる”ような思いでサブスクを解禁しなくてもサブスクの本質的な目的は達成されていることになる。
ここから世代の若返りやメディアでの露出を狙っていくのであれば、広告宣伝のつもりでサブスクを解禁したりYouTubeに曲の全てを公開するのもありだろう。反対に、ロイヤルカスタマー層に対してコンテンツを提供する方針であれば、ディナーショーやライブといった高付加価値のコンテンツに注力していくべきで、サブスクのような薄利多売のサービスにコンテンツを卸すことは逆効果になる可能性もある。
令和を生きるミュージシャンは、サブスクの台頭を機に自身のブランディングを踏まえたコンテンツの配信戦略が今後一層、求められてくるだろう。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCFO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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