「地獄に墜ちてほしい」騒動で浮き彫りに? 音楽サブスクで得するミュージシャン、損するミュージシャン:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/4 ページ)
シンガーソングライターの川本真琴氏が26日、自身のSNSで音楽のサブスクリプションビジネスについてのぼやきととられる場面があった。ただし、この点についてはミュージシャンの間でも見解が分かれるようだ。
TikTokで40年前の名曲が再流行? 令和の新たな音楽事情
このような音楽のフリーミアムモデルは、ときに過去の名曲を再流行させるといった効果ももたらす。例えば、ショート動画アプリのTikTokでは、音楽著作権の管理団体であるJASRACへの支払いを運営会社であるバイトダンスが負担する代わりに、ユーザーは無料で楽曲を動画のBGMできる。その際に、昭和の名曲が他世代の心を捉えて再度の流行をもたらすといった現象が発生し始めている。
具体例を挙げると、泰葉氏の代表曲でもある「フライディ・チャイナタウン」がブームとなった。この曲は1981年に泰葉氏のデビュー曲として同氏が作曲も手がけた昭和の名曲である。Google検索ボリュームの推移を示す「GoogleTrends」によれば、22年ごろから「フライデー・チャイナタウン」という検索キーワードの検索量が急増している。
40年以上も前の曲が2022年になって拡散されたのは、同時期にTikTok経由で「歌ってみた」動画や、バズった動画のBGMとして使われていたということもある。流行初期の動画コメントには、本編へのコメントだけではなく「この曲はなんですか?知りたいです」といったBGMに関心を示すコメントも少なくなかった。
正式な曲名は「フライディ・チャイナタウン」であるにもかかわらず、「フライデーチャイナタウン」という微妙に異なる曲名が検索されている点に注目したい。このような検索のされ方は、歌詞の特徴的な「Fly-Day Fly-Day CHINA TOWN」というフレーズから、「フライデーチャイナタウン 曲名」などと検索をかけることで曲を探ろうとする動きがあったと推察できる。つまり、フライディ・チャイナタウンの再流行は、泰葉氏往年のファンによるものではなく、TikTokユーザーを中心とした若者による新たなブームといえるのではないだろうか。
では、なぜTikTokユーザーは急に40年も前の曲を動画のBGM等に使おうと思ったのだろうか。その答えは、YouTubeでの無料楽曲公開にある。同楽曲を管理する UNIVERSALMUSICJAPANのYouTubeチャンネルでは、5月にフライディ・チャイナタウンの公式フル楽曲を公開し、公開から程なく100万再生を優に超える再生数を誇った。そこで楽曲がYouTubeでのおすすめにピックアップされ、動画や歌ってみたカバーなどが制作されることで、公開から一層検索ボリュームの伸びを加速させていることが分かるだろう。
ほかのアーティストに目を向けると、メディア露出が近年増加している広瀬香美氏も4月に自身の代表曲である「ロマンスの神様」をYouTubeで公開している。そこからフライディ・チャイナタウンと同じメカニズムで、広い層に曲が聴かれる再ブーム現象が起こっている。
令和の音楽ビジネスは、今やサブスクどころか「タダ」で話題性を獲得し、そこから動画再生の収益やライブへの集客、ロイヤリティの高いグッズなどへの物販といったいわゆる「フリーミアムモデル」への移行が進んでいると思われる。
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