“技術大国”イスラエルから、日本企業が学べることはたくさんある:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
イノベーション国家・イスラエルの技術力を支えている政府機関「MAFAT」のベンチャーキャピタル責任者に先端技術などについて話を聞いた。同国から日本が学べることとは。
米国防総省の組織が開発した先端技術
そもそも日本人にとっては、防衛のための機関が先端テクノロジーを生み出して民間に転用しているというコンセプト自体に馴染みがないかもしれない。この分野で、最も有名なのは、米国のDARPA(国防高等研究計画局)だ。
DARPAは米国防総省の組織で、インターネットや「GPS(全地球測位システム)」、音声アシスト機能「Siri」、匿名通信システム「Tor」、手術支援ロボット「da Vinci」などを開発し、民間に転用した。
イスラエルでDARPAと同じ位置付けなのが、MAFATである。同機関は、イスラエルの国防にとって必要な最先端テクノロジーの開発について、方針などを決めていく司令塔的な組織として存在している。その上で、国の防衛に使える技術の開発情報を把握して、さらに研究開発も行う。
例えば、イスラエルへのミサイルを迎撃する防空システム「アイアンドーム」もMAFATが開発し、近年軍事的によく使われるようになったドローンもイスラエルが先行して開発をした。最近ではレーザー技術が注目されている。レーザーでミサイルを迎撃したり、ドローンを墜落させたりするような技術で、22年中には現場に投入する予定だ。
MAFATは、イスラエルの安全保障にかかわる国内組織などとも連携して、先端技術の開発を進めている。それら組織には、イスラエル国防軍(IDF)や軍関連と民間の軍事産業、イスラエル宇宙局や航空宇宙産業、イスラエル生物学研究所などがある。さらに、スパイ機関である「モサド(イスラエル諜報特務庁)」や、IDFのサイバー部隊である8200部隊もMAFATと協力関係にある。
MAFATは毎年、スタートアップ企業に約1000億円もの投資を行っている。国防に生かせる技術などを国家を挙げて支援し、その中から民生用途で使えるものは転用していく。これまで、500社を超えるスタートアップ企業に対して、軍事テクノロジーの民間転用を支援してきた。
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