「無借金経営こそ安心」の危険な誤解 “借り入れ恐怖症”の企業が陥るワナ:支払金利は“保険料”と心得よ(6/7 ページ)
「無借金経営」という言葉に魅力を感じている経営者や財務担当者は少なくないようです。しかし、財務基盤が盤石な大企業ならともかく、手持ち資金が潤沢ではない中小企業が無借金経営を目指すことには問題があります。社長と経理が知っておきたい「無借金経営のワナ」について、専門家が解説します。
銀行は「お金がある会社」に貸してくれる?
逆説的な表現になりますが、銀行は「お金があるから貸してくれる」という一面があります。
私は税理士として開業して約20年になりますが、顧問先企業をはじめとして、多くの中小企業の資金繰り相談に乗ってきた経験からすると、しばしば、「今ここに現金があればなあ」という話になります。現預金があれば、滞納している税金を精算・整理して、その整理がついたら銀行と借り入れの話もでき、経営も安定するはずなのに……というケースが多いのです。
手元資金に余裕があれば、売掛金の回収サイトの交渉ができたり、買掛金の支払いサイトを縮めて、より安く材料の提供を受けたりできるようになります。
現預金は、決算書に載っている他の勘定科目のどれとも性質が全く異なります。現預金で借入金を返すことはできますが、売掛金で借入金を返すことはできません。現預金を持っていることこそが信用につながるのです。そして現預金は借入れで調達したものであっても評価は全く変わらない、むしろ借入れの方が評価が上がります。
例えば、借入金ゼロで預金1000万円の企業と、借入金3000万円で預金4000万円の企業では、実質は変わりませんが、銀行が評価するのは後者の企業です。現預金が多いことに加えて、「どこかの銀行が融資をした」ことが信用になるからです。
「銀行から借りてくださいと言われる」「手元資金が十分に確保できている」という状態は、じつは「卵が先か鶏が先か」の問題です。銀行から「借りてください」と言われるには、手元資金が十分に確保できている必要があり、手元資金を十分確保したければ、銀行から「借りてください」と言われる状態を作る必要があります。
さらに言うと、「借りたかったら借りてでも手元資金を持っておけ」ということになります。それも「借入限度額まで借り、手元資金を厚くしておく」ことがポイントです。
© 月刊経理ウーマン
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