スシロー、おとり広告で「信用失墜」し客離れ──それだけではない業績悪化のワケ:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(5/5 ページ)
最近のスシローといえば、おとり広告の問題で景品表示法に係る措置命令を受けてしまった件は記憶に新しいことでしょう。こういった問題が起きるとどのような影響があるのかを「減損損失」という視点から見ていきます。
収益性の見通しが悪化し、減損損失が必要に
スシローではおとり広告の問題が起きて以降、集客に苦戦し業績は悪化していました。結果として、店舗の収益性に関しても将来の見通しが悪化します。そうなると店舗の使用価値が下落するので、減損損失が必要になりました。
このため、業績不振になったり問題が起きて想定を下回る事態が起きたりすると、実際の業績悪化に加えて「減損損失」という過去の投資の失敗分の損失も加わり大きな業績悪化につながります。
大赤字の決算でも、蓋を開ければ減損損失ということも
ちなみに減損が起きる順序を考えてみると、固定資産を取得してから減損という順序になります。1億円の店舗を作り終わった後に、収益性が低下した場合に減損損失が起きますよね。
ということは、減損が出たからといって、会社から新たな資金の流出があるわけではありません。大幅な業績悪化にはつながっても、財務状況が悪化するわけではないのです。
場合によっては、企業は減損損失の影響で何百億円・何千億円といった大赤字に陥ります。そうしたニュースが出ると、「あの会社は倒産するんじゃないか」なんて声が上がることがありますが、以前の投資が失敗だったというだけで資金の流出が無いのであれば、倒産につながるケースは少ないです。
もちろん投資を失敗したことは間違いないわけですし、何か問題を起こしてしまったのであればそれが今後にも悪影響を与えることはあります。借り入れをして店舗を作っていればその返済が滞り倒産するようなケースもあるでしょう。
しかしながら、減損が起きた時点では資金の流出はないので、すぐに何かが起きるわけではないということは分かると思います。
前回の引当金のケースでもそうでしたが、決算上の数字というのは実際の業績悪化以上に大きな赤字や業績悪化につながるケースが多々ありますし、実際の資金の流れと業績の悪化は一致していないことが多いです。
このため、どういった要因で業績悪化が起きているのかを知っておくことは重要ですね。減損が何なのかを知っているかいないかでは、今後のニュースの見え方が変わるのではないでしょうか。
次回はフジテレビを例に取り上げます。
筆者プロフィール:妄想する決算
決算は現場にある1次情報とメディアで出てくる2次情報の中間1.5次情報です。周りと違った現場により近い情報が得られる経済ニュースでもあります。上場企業に詳しくなりながら、決算書も読めるようになっていく連載です。
voicy:10分で決算が分かるラジオ、note、Twitter、YouTube
関連記事
- レオパレス21「赤字686億から復活」の大きな誤解 施工不備問題が残した“傷跡”と未だ苦しい実態
レオパレス21は施工不備発覚が社長の引責辞任にまで発展するなど、大きな問題となりました。この影響で一時は巨額の赤字を抱えましたが、22年3月期には黒字に転じたため、現在は回復途上にある──この見方は、決算書に表れる「ある項目」を知ると、ガラリと変わります。 - 社長は「トヨダ」氏なのに、社名はなぜ「トヨタ」? “TOYODA”エンブレムが幻になった3つの理由
日本の自動車産業をけん引するトヨタ自動車。しかし、同社の豊田社長の名字の読み方は「トヨダ」と濁点が付く。なぜ、創業家の名字と社名が異なるのか? 経緯を調べると、そこには3つの理由があった。 - 「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。 - 「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。 - 社員に昇進を打診したら、本人が拒否──懲戒処分にできるのか?
「社員に管理職への昇進を打診したら断られた」という話を、よく聞くようになりました。調査によれば、出世したいと考える20〜30代は約2割ほど。昇進を拒否した社員に、どう対応すべきなのでしょうか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.