スシロー、おとり広告で「信用失墜」し客離れ──それだけではない業績悪化のワケ:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(4/5 ページ)
最近のスシローといえば、おとり広告の問題で景品表示法に係る措置命令を受けてしまった件は記憶に新しいことでしょう。こういった問題が起きるとどのような影響があるのかを「減損損失」という視点から見ていきます。
これは間違った情報を与えてしまいそうですが問題はないのでしょうか? 結論からいうと、実はこれは全く問題ありません。
というのも、帳簿価格より高く売れるなら売却価値のも場合もありますが、この資産の裏付けとなっている価値は基本的には使用価値です。つまり、「この1億円の固定資産を使うと1億円以上は稼げますよ」というのが価値の裏付けです。
当たり前ですが1億円かけて店舗を作る際には、それ以上のリターンが見込めるという見通しので投資をしています。1億円かけて1000万円稼ぐぞという見通しで、店舗は作りませんよね。
これに従ってスシローのケースでも売る際の価値ではなく、スシローが使った際の価値が1598億円以上あるので有形固定資産の額を1598億円と書いていても誤解を与えることはなく、問題ないというわけです。
決算書上の価値を下回った際に起きるのが「減損損失」
しかし、全ての店舗が当初の想定通りのリターンが出せるかといえば、そんなことはあり得ません。1億円稼げるぞと思って作った店舗で5000万円しか稼げなかったということは当たり前に起きます。
それならば、店舗の収益性の見通しが悪化して、使用価値が大きく下がっててしまった場合にはどうなるのでしょうか?
このときに起こるのが「減損損失」です。「決算書上1億円の店舗を使っても、どうやら5000万円しか稼げなさそうだ」という場合、価値の裏付けがなくなるので固定資産の額を5000万円まで下げる必要が出てきます。
そうなると1億円の店舗が5000万円になるわけですから5000万円の損失が出ます。この5000万円の損失が「減損損失」です。
さて、スシローの例に話を戻しましょう。
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