スシロー、おとり広告で「信用失墜」し客離れ──それだけではない業績悪化のワケ:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(3/5 ページ)
最近のスシローといえば、おとり広告の問題で景品表示法に係る措置命令を受けてしまった件は記憶に新しいことでしょう。こういった問題が起きるとどのような影響があるのかを「減損損失」という視点から見ていきます。
実際にスシローも下方修正の理由として「減損損失」を32.89億円ほど計上したことを挙げています。では減損損失とは何なのでしょうか? それを説明していくために前提知識として、まずはそもそも固定資産の価値とは何なのかを説明していきます。
決算書と現実のズレ
スシローは回転ずしですから、店舗や調理設備、土地などの固定資産を抱えるビジネスです。
実際にスシローの決算書を見てみると店舗などを含む有形固定資産が1598億円と多額です。資産全ての合計でも3315億円ですから、有形固定資産が大きくなりやすいビジネスだと分かりますね。
では、あらためて考えてみるとこの有形固定資産1598億円というのはどういった意味を持っているのでしょうか? 基本的には、この帳簿上の資産の金額は取得するのにかかった金額を表しています。(実際は減価償却などで減っていくので違いますが、今回は減損を理解することが目的のためざっくりと取得価格と考えて大丈夫です)
そうした場合、1億円で作ったスシローの店舗は、売ろうと思った時に1億円で売れるのでしょうか?
回転ずし店舗の設計は商品を流すレーンがあったり調理設備に関してもすしを作るのに特化しています。そのため居抜きでは買い手は競合の回転ずしチェーンくらいに限定されるでしょうから、なかなか買い手がつきそうにありません。
となると、売るためには原状復帰費用が掛かってマイナスになる可能性すらありそうです。中には売れる店舗もあるかもしれませんが、その大半は帳簿上の価格では売ることは難しいでしょう。
つまり決算書上には有形固定資産1億円と載っていたとしても、それを売ったからと言って1億円が手に入るわけではないということです。しかし、決算書を読む側は、「有形固定資産は1億円」と書いてあれば、それだけの価値のあるものを持っているんだと思ってしまいます。
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