「住みたい街」5年連続トップの横浜 住民だけでなく企業からも人気を博し続ける納得の理由(3/4 ページ)
横浜といえば、「住みたい街」ランキングで5年連続トップとなるなど、人気の街だ。一方で、企業とのコラボや撮影依頼も多く、企業からも人気を博している。いったいなぜ、これほどまでに横浜は人気なのだろうか。市の歴史や取り組みとともに解説する。
さらに「なるほど」と思ったデザインもある。現在の日本大通りの先には象の鼻テラスがあり、眺望が抜けている。日本大通りの整備を行った時点では、建物が並んでおり、眺望が抜けきっていない状態だった。そこで、いずれは遠く海まで見晴らせるような眺望を実現する狙いで、さまざまな改良を施した。具体的には、道路標識を移動し、駅の出入り口の屋根をガラスにした他、照明灯が悪目立ちしないよう、樹木のあるラインにまで後退させるなど、眺望を遮らないようにしたのだ。
その結果が、訪れた人たちが目にする気持ちのよい、そして“絵”になる日本大通りである。それぞれの工夫は小さなものだが、それが一つの場所にいくつも重ねられ、さらに長い間をかけて少しずつ作られてきた結果が、横浜らしい風景に凝縮されているのである。
むろん、こうしたデザインの工夫が凝らされているのは日本大通りだけではない。みなとみらいの高層ビル群と赤レンガ倉庫の「新旧」そして「高低」の並ぶ風景も、港北ニュータウンの「住」と「農」が併存する緑の環境も、そして郊外の駅や役所の佇まいその他も、同様にデザインされているのである。もちろん、民間の開発事業者との間で協議が不発だった例もあり、全てがうまくいっているというわけではないというが、それでも市中の多くの場に風景全体を考える目が生かされているのである。
デザインの行き届いた風景で「売れる」街に
その結果、横浜の都市空間は、いわゆる「売れる」ものになっていると話すのが、横浜市の貝田泰史氏(政策局シティプロモーション推進室広報戦略・プロモーション課長)だ。
大きな誘致活動をしているわけではないにもかかわらず、市のフィルムコミッションには年間700〜800件の撮影相談があるといい、個別施設への直接の問い合わせも含めれば、さらに多いと推察できる。都心部だけでなく、ニュータウンや住宅街なども撮影などによく使われているそうだ。
イベントの舞台としてもさまざまな場所が使われている。代表的なものが14〜19年に毎夏1週間ほど行われていた「ピカチュウ大量発生チュウ!」と題したイベント。
「臨港パーク、赤レンガ倉庫、日本大通り、山下公園、象の鼻パークなど、横浜市内には魅力的な借景となる公共空間のバリエーションが豊富にあります。ホールや、ただ広いだけの空間があるような場所にはない表現ができます。
それを見込んで、ポケモン社側から提案があり、6年間で延べ1213万人を動員しました。それ以外でも、『ファイナルファンタジー』30周年の際に行ったホテル自体をスクリーンにしたプロジェクションマッピングでは2日間で10万人が集まりましたし、22年で4年目になる『ヨルノヨ』という、冬に夜景を楽しむイベントでは、21年に131万人が集まっています。さまざまなコンテンツと景観が一体となって街のイメージ、憧れを醸成していると考えています」(貝田氏)
実際、少し古い調査にはなるが、12年に文化観光局横浜魅力づくり室企画課が行ったアンケート調査では、横浜の魅力第1位は「街並み・景観」、ついで「夜景」となっている。また20年に文化観光局観光振興課が実施した外国人旅行者を対象にした調査では、街歩きを楽しみに来訪する人が日本全体の平均より多いことも分かっている。
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